このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
5 QMSの有効性って何?
ISO 9001 8.2.2 では、次の事項が満たされているか否かを明確にするために内部監査を実施することを要求している。
a) QMSが、個別製品の実現の計画に適合しているか、ISO 9001の要求事項に適合しているか、及び組織が決めた要求事項に適合しているか
b) QMSが効果的に実施され、維持されているか
すなわち、a)QMSの適合性とb)QMSの有効性の確認である。特にb)は、内部監査固有の要求事項である。
図8に審査登録機関の審査と内部監査の目的の範囲の違いを表す。
また、適合と有効性をISO 9000では、次のように定義している。
3.6.1 適合(conformity)
要求事項を満たしていること
3.2.14 有効性(effectiveness)
計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度
ここでは適合性の話は割愛し、有効性の確認にポイントを絞って述べる。
内部監査規定などには、監査活動でQMSの『有効性』を確認するというルールが定まっているのだが、実際には評価されていないことが多い。
QMSの『有効性』て、何ですか?
と、質問しても答えが返ってこない。
有効性を理解するためには、先の定義より、「計画した活動」と「計画した結果」がキーワードとなる。「計画した結果」とは予め設定した目標であり、「計画した活動」とは目標を達成するために予め決めた活動の筋書きのことを指す。
QMSは、図3に示すように品質方針や品質目標を達成するための仕組みであることから、
QMSの「計画した結果」は、品質方針や品質目標の達成であり、従って、
内部監査における『有効性』の確認は、品質方針や品質目標の達成度を確認することになる
その他「計画した結果」を、各プロセス単位で考えると、
7.4購買管理の目的は、適合しない購買品の当社への流入防止であり、
7.5.1製造及びサービスの管理の目的は、不良品など不適合製品の発生予防であり
8.2.4製品の監視及び測定の目的は、クレームにつながる不適合製品の流出防止である
ことから、
7.4では購買品の不具合実績
7.5.1では製造工程における不良率
8.2.4では検査の不備に起因するクレーム件数
などのパフォーマンスが考えられる。(但し、パフォーマンスに係わる有効性は、会社が必要と判断したときでよい)
適合性の確認が決めごとに対する順守状況の確認に対し、有効性の確認は目的に対するパフォーマンスの評価である。当然、パフォーマンスが達成されなければルールの見直しに繋がる。従って、適合性と有効性の評価は図9のように表すことができる。
QMSは、常に暫定の仕組みであり、顧客を含む世の中の価値観が変われば、より良い方向へ変わって行かなければならない。
QMSを変えるきっかけを与えてくれるのが有効性の評価結果であり、有効性を評価するツールが内部監査なのである。
6 おわりに
最後に、皆さんゲームに参加してみてください。
まず、図10をご覧になって、A~Eの中で好きなアルファベットを選んでください。
経験的には、Aを選ぶ方が多いのですが、たくさんの方に選んで頂くと、A~Eでばらついた結果になります。
次に、頁を遡って図4をご覧になって、同じようにA~Eの中から好きなアルファベットを選んでください。どうでしょうか?皆さんはDを選びましたか。また、Dを選ばなくても、やはりハートのマークは気になります。
実は、このあみだくじのゲームは、QMS活動に通じるものがあるのです。
あみだくじのゲームに参加した皆さんは組織の一員、ハートのマークは品質方針・品質目標です。将来到達すべくハートのマーク(品質方針・品質目標)を遡り、これに到達する道を定め、アルファベット(現在のポジション)の位置を選択したのです。
ハートのマークがなければ、皆さんばらばらな方向へ向かってしまいます。QMS活動に例えれば、会社の向かうべき方向など関係なく、従業員の皆が好き勝手な方向に向かうことと同じです。
QMSで品質方針・品質目標がいかに大切かをお解りになって頂けるでしょうか。
内部監査は、このQMS活動の中で、向かっている方向に間違いはないか、また、顧客を含む世の中の期待に品質方針・品質目標が合致しているかを確認する貴重なツールなのです。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特別記事「内部監査はQMS活動全体の状態が分かるバロメーター」 2006年2月号より
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