このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
2.監査所見を的確に表明する
ISO 19011:2011(マネジメントシステム監査の指針)には、「監査所見」を次のように定義しています。
収集された監査証拠を監査基準に対して評価した結果。
注記1 監査所見は、適合又は不適合を示す。
注記2 監査所見は、改善の機会の特定又は優れた実践事例の記録を導き得る。
以下、省略
これから、不適合および優れた実践事例を挙げ、その記述の仕方についてポイントを述べていきます。
(1)不適合記述のポイント
ISO 19011:2011の附属書B8.3には、不適合の記録に考慮する事項について次のように記述されています。
-監査基準の記述又は監査基準への参照
-不適合の明示
-監査証拠
-該当する場合、関連する監査所見
これを基に、不適合の記述例を(図3)に示し、①~⑤の記述に係わるポイントを次に述べます。
① 監査基準については本連載第2回(2012年5月号)で述べました。ここで改めて、分かりやすく説明します。監査基準とは、「適合と不適合を分ける一線である(ルール)」と定義されます。FSMSの一般的な内部監査では、監査プログラム管理者は監査基準としてISO 22000又は、食品安全マニュアルを設定します。(図3)の事例では、監査基準はISO 22000としました。①の記述は、ISO22000要求事項の中から不適合の内容に関連する箇所を明示したものです。
② 不適合の明示は、②と③に分けて記述します。②の記述は、不適合の事象に関連し、逸脱した手順の内容を示しています。
③ 不適合の事象は5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)により具体的に記述します。②の記述内容である「やるべきこと」と、③の記述内容である「その通りにやっていないこと」を対比することで、両者のギャップが鮮明になります。
④ ②の記述内容の出所となる手順は何であるのかを示します。
⑤ ③の記述を裏付ける監査証拠を示します。
(2)優れた実践事例の記述のポイント
ISO 19011:2011の附属書B8.2には、適合の記録に考慮する事項について次のように記述されています。
-適合を示す監査基準の識別
-適合を支持する監査証拠
-該当する場合、適合の明示
適合に係わる事象について、全てを記録する必要はありませんが、適合する事象が監査目的に重要な意味を持つものであれば、その内容を記録した方が良いでしょう。例えば、監査目的が再発防止処置の有効を確認することであれば、適合している状態とその裏付けの監査証拠を記録に残すことで、再発防止策が確実に行われて、有効であることを関係者に明快に伝えることができます。
優れた実践事例、または、改善の機会の記述の仕方は、ISO 19011:2011には触れられていませんが、これらも、適合の記述の仕方を参考にすると良いでしょう。優れた実践事例とは、「MSを効果的に活用している具体的な活動事例」であり、改善の機会は「要求事項を満たすための能力を高めるための機会」と言えます。
(図4)には、優れた実践事例を示しました。(図4)⑥と①と、⑨と④と、⑩と⑤は、それぞれ同じ内容なので、説明は省略して、⑦および⑧の記述の仕方について述べます。
⑦ 優れた活動事例に係わる手順の内容を明示しています。
⑧ 何が、どのように優れているのかを具体的に明示します。
(図3)および(図4)の記述内容を見れば、当該の監査に立ち会わなかった人たちでも、その内容が分かることでしょう。監査所見は、関係者に伝わる情報が記されていなければ、その価値は全くないのです。監査所見の記録は、誰が見ても分かるように、また、時間が経過してもその状態を再現できることが大切なのです。
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