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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第175話 組織を活かす、QMSを活かすための技術・技能の伝承」「わざ」を仕組みで活かす -「気づき」の大切さと「気づき方」を伝える- (その1)

1.はじめに

今から25年前の話ですが、筆者は、赴任先の地で町内会の役員を務めたことがあります。町内会の役員の仕事は年間の様々な行事を運営することですが、その中で最も大きな行事といえば地域の運動会です。役員になって、初めて参加した地域の運動会は、その規模の大きさに対する戸惑いと、慣れない役割をこなさなければならない責任感で、訳も分からず右往左往していました。午前中のプログラムが無事に終わり、昼食のお弁当を食べようとしたときです、知り合いの人から、ご苦労さんと缶ビールが差し出されました。周りを見てみると、すでに、皆、おいしそうにビールを飲んでいました。筆者は礼を言い、一気にビールを飲み干しました。そのときのビールがおいしかったこと、今でも忘れません。それ以来、地域の運動会、学校の運動会など、運動会と名の付く催しには、必ずビールを持参するようになりました。その為に、わざわざビールを保冷するためのクーラーボックスを購入するほど、念の入れようでした。

 

数年後、筆者は、親しんだこの地を離れ、他の地域へ引っ越しました。そして、新たな地域における学校の運動会に、いつものようにビールを持ち込み、昼食の時に飲んでいると、何故か、周りから冷たい視線が注がれているのを感じます。気にはなりましたが、何はさておき、ビールを飲みました。後日、近所の人から運動会でビールを飲んでいる不謹慎な人がいると噂になっていると聞いてびっくり。しかし、冷静になって振り返ってみると、周りにビールを飲んでいる人はいなかった気がします。また、学校の催し物にアルコールを持ち込むことが不謹慎であるということも何となく解るような気がしました。そこで、学校の運動会ではだめでも、今度は地域の運動会はどうか、確認することにしました。地域の運動会の当日、昼食の時間になったとき、周囲を観察すると、やはり、誰もビールを飲んでいません。ここで初めて、筆者は、運動会でビールを飲むのは、前に住んでいた地域だけの習慣であり、世間一般には、この習慣は、認められていないことに気が付きました。

このようなことがあってから、我が家では、「運動会でビール」は、ことわざでいえば、さしずめ「井の中の蛙大海を知らず」、つまり知識や視点のきわめて狭いことの意味で使っています。

 

 

企業活動においても、日頃の業務に追われていると周りが見えない、自社の常識が一般の常識から外れていることに気づかないなどということがあります。社会的な問題を引き起こした企業の中には、マスコミなどに問題を取り上げられて、はじめて、自社の行為が世間一般では許されないことであったことに気づいた企業が少なくないのではないでしょうか。品質マネジメントシステム(QMS)は、内部及び外部の視点によるチェックを有しており、使い方次第で、自社の問題に「気づく」ために有効に働くツールとして活用できます。

 

さて、話は変わりますが、企業活動の中で、新たな「技術・技能」を創造する、又は現在の「技術・技能」を磨き、高めるときにも、「気づく」ことが、重要な役割を果たします。

今年は、4年に1度のスポーツの祭典、オリンピックが北京で開催されました。オリンピックにおいて日本が得意とする競技、柔道について、日本代表選考の模様と、この選考に大きな影響を与えたヨーロッパの遠征の様子を5月の「NHKスペシャル」で放映していました。その題名は、「JUDOを学べ」。それを観て、まず、筆者が驚いたことは、柔道の競技人口は、柔道を国技とする日本が20万人であるのに対し、フランス60万人、ドイツ35万人とヨーロッパ勢が日本を遙かに凌ぐ数であることでした。そして、相手から「一本」をとることにこだわる日本の「柔道」に対し、相手にポイントを奪われず、相手からポイントをとるヨーロッパの「JUDO」に、日本選手は苦戦し、勝つことができない状況に追い込まれていることを知り、更に驚きました。ヨーロッパ遠征の取材は、今までの日本の心と技にこだわる選手、今までの日本の柔道では勝てないことに気づきこの遠征で学ぶことに重点を置いた選手、それぞれの選手の気持ちと取り組む姿勢が感動的でした。

日本の最終選考会を兼ねた全日本選手権100Kg超えのクラスでは、並み居る強豪を破り、見事優勝を果たし、代表選手に選ばれたのは石井慧選手でした。石井選手は、ヨーロッパの「JUDO」を観て、そしてヨーロッパの選手と実際に試合をすることで得た感覚により、オリンピックで勝つためには、自らのスタイルを「柔道」から「JUDO」に変えることが必要であることに「気づき」ました。今まで育ってきた世界とは違う別の世界を観て、感じたことをきっかけとして、技を磨いたのです。

 

(注)原稿は、北京オリンピックの開催前に執筆しました。北京オリンピックで、石井選手が良い結果を出していることを期待しています。

 

 

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「ISOで技術・技能を伝承する」の第1章「組織を活かす、QMSを活かすための技術・技能の伝承」「わざ」を仕組みで活かす -「気づき」の大切さと「気づき方」を伝える-」より


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