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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第152話 「第5回 監査結果は、『大いなる財産』」(その3)

3.問題の認識と再発防止

さて、ここからは、経営に活かすための内部監査の留意点の説明に入ります。第5回目のテーマは、『監査結果は「大いなる財産」』です。

 

(1)問題の認識

マネジメントシステムは様々な側面を持っていますが、その一つとして、問題を認識するためのツールとして捉えることができます。

問題とは、「あるべき姿と現状のギャップ」のことを言い(図4参照)、「あるべき姿」を、例えば「自社で決めたルール」とすれば、現状がルール通りに行われていなければ、これは問題です。

また、「あるべき姿」を「適用される法・規制」とすれば、現状が法・規制を遵守していなければ、当然これも問題です。その他、次に挙げるマネジメントシステムで要求されている計画を「あるべき姿」とすれば、もし現状との間にギャップが認められれば、それは問題ということになります。

◇ISO 9001(品質マネジメントシステム)

製品実現の計画、設計・開発の計画、製造の計画

◇ISO 14001(環境マネジメントシステム)

実施計画

◇ISO 22000(食品安全マネジメントシステム)

安全な製品の計画

 

マネジメントシステムは、常に、「あるべき姿」と「現状」のギャップを認識して、そのギャップを解消しながら、企業が定めたゴールを目指す活動です。マネジメントシステムの中で、内部監査は、「あるべき姿」と「現状」のギャップ、つまり問題を明らかにする機会であると言えます。

 

(2)再発防止

何が問題であるのかが認識できたら、それに対して処置を講じます。もし、その処置が対症療法だけでは、その後、再発しないという保証は何もありません。原因を突き止め、その原因に対する処置を講じることで再発を防止できるのです。

ISOでは、対症療法を「修正」、再発防止を「是正処置」と言い、ISO 9000では、それぞれの用語を次のように説明しています。

修正: 検出された不適合を除去するための処置。

是正処置: 検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去する処置。

 

内部監査で指摘された不適合は、次の手順により再発防止を図ります(図5参照)。

1.即時処置(修正): 不適合の状態を適合の状態に戻す。

2.原因究明: 問題の原因を特定する。

3.暫定処置: 当面、問題が再発することを防ぐ。必要に応じて、類似の問題に対し水平展開をする。

4.再発防止: 明らかになった原因を取り除くことにより、再発防止を図る。

5.遡及処置: 不適合が発生した時点を明確にして、その時点まで遡り、不適合の影響に対して必要な処置をとる。

これら5つの要素を是正処置の5原則と言います。

是正処置の5原則の中でも特に大切なのは原因究明です。原因究明には、「特性要因図」、「関連図」「系統図」、「なぜなぜ分析」など、品質管理手法の活用により、原因と結果の関係を明らかにする、原因の候補(要因)を漏れなく洗い出すなど、効果的な解析が可能になります。

 

 

(3)適合性と有効性

ここではまず、適合性と有効性の違いについて述べます。ISO 9000では、「適合」を次のように説明しています。

適合: 要求事項を満たしていること。

(1)で「あるべき姿」として例示した「自社で決めたルール」、「法・規制」などは、全て要求事項に当たります。従って、(1)で述べた問題は、適合性に係わる問題と言えます。

次に、ISO 9000では、「有効性」を次のように説明しています。

有効性: 計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度。

計画した結果が達成された程度を確認するためには、「計画した値」が必要です。そこで、(図4)の「あるべき姿」を「計画した値」とすれば、この値と現状における値との間にギャップがあれば、それが有効性に係わる問題と言えます。ここでの「計画した値」とは、マネジメントシステムにおいて方針に基づいて設定された目標値(品質目標、環境目標など)、業務を遂行する上で定めた指標により設定された目標値(各業務におけるパフォーマンス指標による目標)などを指します。

内部監査は、マネジメントシステムによる活動の中で、次の役割を果たします。

◇マネジメントシステムにおける適合性と有効性を評価する。

◇その結果、明らかになった問題を認識する。

◇問題の原因を究明する。

◇問題の原因を取り除くことにより、再発防止を図る。

◇また、(図4)の「あるべき姿」より優れたレベルの実践事例が見つかれば、これを全社的に普及させる。

 

本稿のタイトル、『監査結果は「大いなる財産」』とは、監査の結果、認識された問題に対し是正処置を図り、その結果得られた成果こそが、企業にとっての財産である、と言うことなのです。

 

4.むすび

今回の連載を締めくくるにあたり、これまでの内容を、この連載の2つのテーマに分けてまとめてみました。

(1)改訂されたISO 19011の主な内容の解説

この連載では、ISO 19011の比較的大きな改定内容を取り上げて解説しました。ここでは紹介できませんでしたが、その他、用語の定義や監査活動に係わる内容の変更箇所の詳細については、規格の本文を参照して下さい。

なお、この連載記事で取り上げた変更箇所とそのキーワードを(表3)にまとめました。

 

(2)経営に活かすための内部監査のポイント

この連載では、内部監査におけるポイントを、5つに絞り込んで説明してきました。説明内容の不足部分にお気づきの点があればご連絡ください。折り返し、回答を差し上げます。

なお、この連載記事のタイトルとその意味(又は、意義)を(表4)にまとめました。

 

最後に、5回にわたりお届けしたこの連載が、少しでも読者の皆様のお役に立てることを願います。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「経営に活かすために内部監査を変える!」 2012年6月号より

 


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