このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
1.扇の要
今年の夏の終わりに、筆者は扇子を新調しました。これまで愛用してきた扇子は、2年前に親骨に近い扇面が破れてしまったのですが、使用に際して問題ないため、これまで使い続けてきました。しかし、とうとうここにきて、中骨が露出してしまい、扇子として全く役に立たない状態になったのです(扇の部位名称は図1参照)。
この扇子は、10年以上も前から使ってきて、とても愛着があったので、少々壊れても使い続けてきたのですが、壊れた箇所が要(かなめ)であったのならそうはいかなかったでしょう。要が壊れてしまえば、親骨および中骨はばらばらになり、扇子はたちまち使えない状態になります。まさに、「肝心要(かんじんかなめ)」の語源になったほど、扇子の要は、極めて大切なものなのです。
ここで、食品安全マネジメントシステム(FSMS)を扇に例えれば、扇の要は食品安全チームと言えます。
今回は、FSMSにおける食品安全チームの役割、および食品安全チームを監査するときの留意点を述べたいと思います。
2.食品安全チームの役割
まず、FSMSにおいて、食品安全チームがどのような役割を果たさなければならないのかを調べてみます。ISO 22000:2005の要求事項から「食品安全チーム」を抽出し、食品安全チームに必要な力量(図2参照)、およびその役割(図3参照)をまとめました。
(1)食品安全チームに係わる力量
6.2.1では、食品安全チームは、力量が必要であることを要求しています。更に、7.3.2では、食品安全チームは、製品、工程、装置および食品安全ハザードなどの多方面の知識と経験を合わせ持たなければならないことについて言及しています。(図2上段参照)。
(2)食品安全チームリーダーの責任および権限
食品安全チームリーダーは、トップマネジメントから任命を受け、食品安全チームを取りまとめ、FSMSのPDCAを確実に回すためのリーダーとして、責任および権限が与えられます(図2下段参照)
(3)食品安全チームの役割
ISO 22000:2005の要求事項に基づく食品安全チームの役割を(図3)にまとめました。(図3)の中心部は食品安全チームを表し、左側に食品安全チームに報告しなければならない事項を、右側に食品安全チームが主体的に実施すべき事項を挙げました。
これについて、次に解説します。
1)FSMSに係わる変更
FSMSに係わる変更は食品安全チームに伝えられ(①参照)、食品安全チームはこれをFSMSの更新に用います(③参照)。なお、6.2.2 f)では、食品安全活動に従事するすべての要員は、食品安全に係わる情報を伝達するために必要なコミュニケーションについて理解しなければならないことを求めています。
2)前提条件プログラム(PRP)の承認
食品安全に係わる知識と経験を有する食品安全チームが、PRPを承認します(④参照)。
3)ハザード分析の実施
食品安全チームは、フローダイアグラムの正確さを検証し(⑤参照)、ハザード分析を実施します(⑥参照)。
4)妥当性の確認
食品安全チームは、HACCPプランおよびオペレーションPRP(OPRP)によって運営される管理手段が効果的であるという根拠を証明しなければなりません。
5)検証結果の評価、分析およびFSMSの更新
個々の検証の結果は食品安全チームに伝えられ(②参照)、食品安全チームはこれらの検証の結果を評価し(⑦参照)、分析します(⑧参照)。この検証の評価と分析は、食品安全チームが俯瞰的(ふかんてき)な立場でFSMSの運用状態を確認するものであり、その結果はFSMSの更新(⑨参照)に反映されます。
以上の1)~5)により、食品安全チームは、Plan(PRPの承認、ハザード分析の実施、管理手段の妥当性確認など安全な製品の計画)、Check(個々の検証結果の評価、分析)、Action(FSMSの更新)にあたり、食品安全マネジメントシステムのPDCAサイクルにおいて重要な役割を担っていることが分かります。
ISOの研修の内容をご覧になりたい方はこちら | |
ISOのコンサルタントの内容をご覧になりたい方はこちら | |
経営のコンサルタントの内容をご覧になりたい方はこちら |
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年