このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
3.内部監査で人を育てる
ISO 19011:2002では、内部監査員は、監査プロセスに対する信用と信頼を確保するために図4に示す要素に基づく力量をもつことの必要性を述べている。
B社は、内部監査員教育を60名の従業員全員を対象におこなっている。監査を受ける側も監査員と同等の力量(図4 参照)をもつことで、効果的な監査ができると考えているのである。つまり、監査側(監査を実施する側)と被監査側(監査を受ける側)の双方が、内部監査の目的(QMSの現状を把握し、良い点及び不適合を含む問題点を抽出し、改善をおこなうための大切なツール)を理解し、QMSの改善に役立てようとしているのである。
しかし、内部監査の実務を担当する監査員は、次の理由により、3名に限定していた。
①指摘内容のレベルを合わせたい
②複数の部署の監査を担当することで、部署間の活動状況の比較ができる
③多くの監査経験を積むことができる
QMS全般の管理を社長から任された管理責任者は、監査実務ができる監査員の増員と内部監査を通じて業務リーダーとなる人財(ひと)を育てることを計画した。
内部監査員の実務教育は、通常OJT(On the Job Training:業務を通じた指導による教育・訓練)でおこなうが、B社の良いところは、OJTのやり方を定めたことにある(図5参照)。
まず、OJTを次の3つのステップに分類し、それぞれの実施内容を定めた。(指導者:教育・訓練をおこなう熟練者、被教育者:教育・訓練を受ける者)
ステップ1:業務の説明 指導者→被教育者
①指導者は被教育者に監査業務のやり方を内部監査規定に基づき説明する。
②説明の際には、監査の計画、実施、フォローアップ活動における重点ポイントを特に強調する。
③指導者がおこなう監査に被教育者がオブザーバー(監査のやり方を観察する)として参加する。
④監査を実施しながら、インタビューの仕方や監査証拠の収集のコツを指導者が被教育者に伝える。
ステップ2:監査業務の実施 指導者,被教育者
①指導者は、被教育者に内部監査のポイントを説明させる。
②監査の一部を被教育者に担当させる。
③指導者は、被教育者のやり方に問題があれば、その場で指導する。
ステップ3:フォローアップ 指導者→被教育者
①被教育者が主体となって、3回の監査を実施する。
②指導者は、被教育者のやり方に問題があれば、その場で指導する。
③指導者は、3回の実務を終えたところで、被教育者に対する教育・訓練の効果を評価する。
④評価の結果、指導者が合格と判定すれば、次回の監査より被教育者は、一人前の監査員として認められ、監査員名簿に登録される。
⑤評価の結果、指導者が不合格と判定すれば、被教育者に対し、合格と判定するまで立ち会い監査を続ける。
このようなB社の教育・訓練プログラムの成果は、被教育者が監査実務をできるようになったことに加え、図6で示す形となって表れた。
人財に対する成果は、被教育者がリーダーとして必要な資質である大局的なものの見方、考え方及び判断力を身につけることができたことである。また、監査実務の訓練に基づく動機付けにより、業務の改善意欲も高まった。
また、教育・訓練プログラムは、OJTの手順が確立されたことにより、OFFJT(Off the Job Training:職場から離れ専門知識などを得るため研修や講義を通じておこなう教育・訓練)との組み合わせにより実践的で幅広い人財開発ができるようになった。
B社の成果が得られたポイントは次の点にある。
1.教育・訓練の目的(業務リーダーの養成)を明確にしたこと。
2.OJTの具体的な手順を定め、業務が教育・訓練の場であることを、教育をする側とされる側の双方に意識づけたこと。
3.教育・訓練の効果確認を実務の評価(実際にできるようになったことの確認)でしたこと。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「中小企業だから実現した儲かるISOのコツ」の第2章「人も仕組みも育てるもの」より
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