このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
1.はじめに
筆者は、製薬会社K社に在籍していたとき、軟膏・液剤の製造部門の管理業務に4年間携わっていました。筆者の仕事は、生産計画の作成、人員の配置、製造工程の管理などであり、その中でも精力的に取り組んだのは、生産設備の更新又は新規の計画でした。設備の仕様を決めるにあたり、考慮しなければならないのは、機能、性能、安全性、耐久性、信頼性、メンテナンス性などいくつかの要素がありますが、筆者は、「製造過程が見えるための工夫」を、必ず仕様の要素に入れていました。
筆者が、当該業務を前任者から引き継いだのは、新規の製造釜を導入して間もない時期で、品質特性の「見える化」に係わるこだわりは、その直後の経験が始まりです。
前任者は、設備業者の協力を得て、新たな品質特性値を測定するためのセンサーを製造釜に設置しましたが、まだ、その有効性を検証していませんでした。そこで、筆者は、生産で得たデータを解析したところ、その値は、製品の出来映えと著しい相関関係が得られる結果となりました。そして、この知見により、製品の品質は大きく向上したのです。
従来まで測定していた温度、硬さ、pHとは異なる特性値に着目した前任者の功績は多大なものだったのですが、ここで忘れてはならないのは、設備を設計した業者の協力です。センサーの提案、選定、取り付けなど、この設備業者の存在がなければ、製品の大きな品質向上は図れなかったのです。
今回は、ISO 9004 「6.4 供給者及びパートナ」を中心に、「6.5 インフラストラクチャー」、「6.6 作業環境」について述べます(表1)。
本稿のポイントは、次の通りです。
◇供給者の力を借りてパフォーマンスを向上させる
◇インフラに関連するリスクを特定する
◇生産性、創造性及び快適性を促進するための作業環境を作る
2.供給者及びパートナ
まず、ISO 9004 「6.4 供給者及びパートナ」の要点を挙げます。
「6.4 供給者及びパートナ」の要点
◇パートナは、製品の供給者、サービスの提供者、技術機関及び金融機関、政府及び非政府組織又はその他の利害関係者であり得る
◇パートナとは、パートナシップ契約で合意され、貢献しうるものである
◇組織はパートナと相互に依存し、互恵関係は両者の価値創造能力を高める
◇パートナシップを組織の活動に投資し、損益を共有する供給者との関係の特定の形態の一つであると考えることが望ましい
◇パートナシップを構築している場合、(図1)に示す事項を考慮することが望ましい
◇供給者及びパートナの選定及び評価に際して、次のような事項を考慮する
-組織活動への貢献、並びに組織及びその利害関係者に対して価値を創造する能力
-供給者及びパートナの能力を継続的に改善する可能性
-供給者及びパートナとの協働を通して達成することが可能な組織の能力の強化
-供給者及びパートナとの関係にかかわるリスク
◇定期的な評価及びフィードバックに基づき、提供される製品の品質、価格及び納期、並びにマネジメントシステムの有効性を継続的に改善する
◇組織の短期的目標と長期的目標のバランスを考慮し、供給者及びパートナとの関係を継続的にレビューし、強化する
箇条6.4では、供給者及びパートナとの互恵関係は、両者の価値創造能力を高めるとあります。又、パートナシップを、投資により損益を共有し得る供給者との関係における形態の一つと考えることを薦めています。
ただ、供給者及びパートナと、どのような関係を築けば良いのかについては、ここでは明らかにされていません。供給者との関係については、附属書B「原則8:供給者との互恵関係(図4参照)」のb)①~⑦が参考になります。また、ISO 10014「品質マネジメント-財務的及び経済的便益を実現するための指針」(参考文献1参照)の「供給者との互恵関係」に示された便益と、その便益を得るためのPDCAの枠組みもまた参考になるので、この2つの内容については、第5章で詳細を述べることにします。
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