このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
2.QMSのリフォーム
A社は、従業員数120名の産業資材を製品とする製造会社である。ISO9001の審査登録後2年を経過し、翌年は更新審査を迎える。社長は、この2年間のQMS活動に不満を持ち、たいへん居心地の悪さを感じていた(図2 参照)。
その不満の主な中身は、
①マネジメントレビューの形骸化
②顧客クレームの増加
③形式ばかりの重視と、不必要な文書や記録
である。
これらに対して、解決策の手順を以下に述べる。
手順1:事実確認と現状把握をおこなう
(1)マネジメントレビューについて
品質マニュアルには、マネジメントレビューを1回/年 3月(年度末)に実施すると定めている。ちなみに、1年及び2年前に実施したマネジメント記録を確認したところ、ISO9001 5.6.2 a)~g)の要求事項に合わせたような活動内容であった(図3 参照)。
なお、この記録又は関係者からのインタビューによりマネジメントレビューは、社長に対するQMS年間活動の事後報告会の場となっていることがわかった。
(2)クレームについて
顧客から得られたクレーム情報をどのように伝達し、処置を図っているかを調査した。外部コミュニケーションで受けた情報に対し、ISO9001 5.5.3 内部コミュニケーションの流れに従って調査する。
①まず、クレームの分類、例えば、製品の物性、外観などの品質特性、運送、梱包などの保管・引き渡し、納期遅れなど納期に係わる等、よりそれぞれ1件~2件の事例を特定する。特定した事例について次の②~⑤の調査をおこなう。
②外部コミュニケーションによる受付が、手順に基づいて(7.2.3顧客とのコミュニケーション)実施されていることを確認する。
③5.5.3内部コミュニケーション、プロセスチャート又は、その他の条項に基づき、手順通りの活動がおこなわれているかどうか確認する。
④更に、手順にはないが、この情報を必要とする関係部署に、情報の伝達もれがないか確認する
⑤得られた情報に基づいて、適切な処置が実施されていることを確認する
(図4 参照)
この調査により、次の3つの問題が判明した。
① クレームの60%以上は、内職が関係している。
② クレームに関係する内職に、必要な情報が届いていない。
③ クレームの処置が責任部署の中で処置され、その処置の結果が一元化されていない。従って他部署に対する水平展開もされていない。
手順2:やり方の改善をする
(1)マネジメントレビューについて
これまで社長は経営会議、品質会議、生産会議など毎月又は毎週実施している会議に出席している。但し、いずれも結果報告型の会議である。
これらの状況を踏まえ、次の改善を実施した。なお、改善内容を5W1Hで示す。
When:すぐに(速やかに)
What:マネジメントレビューを
Where:品質会議(1回/月)の中で
Who:管理責任者が議長で、社長出席のもと
How:報告型を改め、提出されたデータを審議(くわしく事の可否を論議・検討すること)する
Why:マネジメントレビューは、社長自らQMSが適切で、妥当で、かつ有効であることを判定するための活動だから
これに基づき、品質マニュアルの5.6の内容を変更し、マネジメントレビューの結果を記す様式(図3 参照)の項目欄も、インプット、審議内容、アウトプット、残された問題点の4項目とし、2項目を追加した。
(2)クレームについて
手順1で上げられた3つの問題点は、それぞれ原因を特定し、処置を実施した(表1 参照)。
対策は、この問題に関連した条項、7.4購買プロセス、6.2教育・訓練、5.5.3内部コミュニケーション、8.4データの分析、8.5.2 是正処置 にまで及んだ。
なお、7.4購買プロセス、5.5.3内部コミュニケーション、8.4データの分析については、品質マニュアルの手順を変更した。
手順3:改善の効果を確認する
8.2.3プロセスの監視測定を用いて、7.4購買プロセス、5.5.3内部コミュニケーションのプロセスを監視することとした。
手順4:システムの見直しをする
8.2.3プロセスの監視測定 の結果を5.6マネジメントレビューのインプットとし、毎月実施する品質会議で審議をおこなった。
以上の手順により、A社のQMSの一部はリフォームされ、その効果として、次年度のクレームは50%の減少となった。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「中小企業だから実現した儲かるISOのコツ」の第5章「QMSのリフォームは、必要ありませんか」より
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