このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
1.はじめに
先日、新聞の片隅に、ある記事が載っていました。「集団食中毒事件で、特別清算中の○○は、被害者説明会を開き、被害者賠償を優先して特別清算の手続きを進めていく方針を示した。」
この記事は、昨年(2011年4月)焼き肉チェーン店で発生した病原性大腸菌O111、O157による食中毒の被害賠償に係わるものでした。
この焼き肉チェーン店は、事件の発生前には、安くて旨いとの評判で繁盛していたそうですが、食中毒の発生で一転し、店は営業停止となり、ついには廃業にまで追い込まれてしまいました。
この焼き肉チェーン店にとって、食中毒を発生させたことを機に、
◇消費者(顧客)に危害を与える
◇賠償など多くの費用が発生する
◇社会的信用が失墜する
へと繋がっていったのです。
この事件が起こった背景には幾つかの問題が指摘されていますが、その主な原因に、ずさんな衛生管理が挙げられます。安くて品質の良い製品は、他社を一歩リードする上で重要であるのは言うまでもありません。しかし、食品にとっては、値段や品質ばかりでなく、安全が何よりも大切であり、優先すべき点てあることを、この事件は改めて教えてくれたのではないでしょうか。
食品を取り扱う会社(製造、加工、販売)には、衛生管理を基礎とした食品安全に係わる仕組み、つまり食品安全マネジメントシステムが存在します。その形は、ISO 22000(食品安全マネジメントシステム)やISO 9001(品質マネジメントシステム)、および食品安全に係わる他の規格に基づくもの、あるいは自己流のものなど形は様々ですが、食品製造会社等は、食品安全に係わる仕組み(食品安全マネジメントシステム)を持ち、食中毒などの危害発生の防止に取り組んでいます。しかし、この仕組みが十分に機能しなければ、事故の発生に繋がってしまいます。この仕組みをチェックするための一つの方法として、内部監査があります。内部監査では、活動手順に重要な管理項目がもれていないか、活動手順に基づいて実施しているか、活動手順は食品安全を保証する上で効果的か、などの観点で調査を行います。
今回から始まる連載記事は、食品安全マネジメントシステムが、適切に機能しているかどうかをチェックするための内部監査を取り上げます。全14回の記事の内、前半第1回から7回(3回と6回を除く)では、3月に改訂される(予定)「JIS Q 19011マネジメントシステム監査の指針」を参考にして、全てのマネジメントシステムの監査に共通する事項について述べていきます。
後半第8回から14回(9回と12回を除く)では、ISO 22000食品安全マネジメントシステムに特有な事項に対する監査のポイントを説明します。ISO 22000食品安全マネジメントシステム(以下、FSMSと略す)の主要な要素は、コミュニケーション、PRP(前提条件プログラム)、OPRP(オペレーションPRP)およびHACCPプランであり、これらが食品安全に係わる問題の発生、並びに安全ではない製品の流出を防ぎます(図1参照)。
また、3回毎(3回目、6回目、9回目、12回目)に、食品・飲料の製造会社で実施している内部監査の活動事例を紹介します。この事例は、品質、環境、労働安全マネジメントシステムの複合監査(第3回)、品質マネジメントシステム、HACCPの複合監査(第6回)、FSSC監査(第9回)、FSMS監査(第12回)と、FSMSにおける内部監査だけでなく、食品安全に関連する様々なマネジメントシステムの内部監査の実施例を紹介する予定です。
それでは、この連載記事の概要の説明はこれくらいにして、早速、第1回目の本題に入ります。
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