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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第171話 ISOと5S・JITのシナジー効果で、さらに儲ける (その4)

4.ISOと5S・JITのシナジー(相乗)効果で更に儲ける

次に、ISOと5S・JITのシナジー効果により更に儲けるための3つキーポイント(①役割、②活用、③評価及び選定)について述べる。

(1)QMS、EMSと5S・JITの役割

本編におけるここまでの記述内容を(表3)にまとめた(表3 参照)。

 

  (表3)から、QMS、EMS及び5S・JITが仕組みの中で、どの役割に配置されるのか。これがキーポイント1である。

 

キーポイント1:QMS、EMSと5S・JITの役割

 

(2)QMS、EMSへの5S・JITの活用

先日、筆者はA社からQMS取り組みの意義について説明してほしいとの講演依頼を受けた。この会社は4年前に本社工場でISO9001の認証を受け、その後昨年から順次サイト及び製品について範囲の拡大に取り組み、いよいよ本年、全社、全製品が認証の対象範囲となるまでに至った。A社の社長は経営ツールとしてのISOの有用性を理解し、力量のあるスタッフを揃え、十分な従業員教育をするなど、QMSに必要な経営資源を始めとするQMS活動全般的な支援に協力的な姿勢で取り組んでいる。A社は認証取得後1年を経過した時点で、当時のQMSがISO9001の理解不足により重装備、かつ役に立たないことに気づき、その見直しの必要性に迫られた。筆者はA社の管理責任者から相談を受け、以降仕組みの見直し及び範囲拡大におけるA社の活動をフォローしてきた。

さて前述の講演の話に戻るが、A社が講演を依頼してきた目的は、範囲拡大の対象となったサイトの従業員が、品質マニュアルは理解できたが、QMSが自分の業務にどのように役立つかはっきり分からないので、その意義を説明してほしいというものであった。筆者は早速、「ISO9001で儲けよう」と表題を付け、次のような内容について講演をした。

「品質マニュアルを4章から読んで、ピンとくる人は誰もいないから、まずプロセスフロー図を見てください」という出だしで、筆者は講演を始めた。QMSには、「顧客満足の向上」及び「方針管理」に係わる活動が含まれる。どちらも、規格要求事項を満たす程度の取り組みでは、企業にとって大したメリットはない。しかし、メリットを得ることができる、つまり儲けることに関連する要求事項に、適切な手順を入れることで効果が出る仕組みに生まれ変わる。A社では儲けるための流れとして「方針管理」(図10参照)、又A社が儲けるためには顧客に儲けてもらわなければならない。この流れとして「顧客満足の向上」(図9参照)について説明した。その後、果たして現状におけるA社の仕組みはどうなのか、受講者に自分の業務内容を含めて考えてもらった。講演における(図9)と(図10)の説明部分については次の通りである。

「顧客満足の向上」は、顧客に感動を与える活動を実践する。つまり顧客が思っていたレベルを上回る、例えば、機能が多い、壊れない、納期が短い、値段が安いなどを実現する活動を従業員が実施する。顧客は期待を上回る製品を手に入れたことで、又心地よい対応に接したことで得をしたと感じる。これによって、顧客が儲ける(得をする)ことにつながる。また、「方針管理」は、各部門が利益に係わる品質目標を立て、これを達成することでA社が儲ける(利益をだす)ことにつながる。前者の活動を(図9)に、後者の活動を(図10)に、その活動の枠組みを示す(図9及び図10 参照)。

さて、話を元に戻すと、先のA社講演事例において注意しなければならないことは、図9及び図10の☆マークの部分、つまり改善(又は改革)活動では管理技術が必要であるという点である。幸いA社はQC活動を長年続けており、改善手順及び品質管理手法に係わる知識はすでに備わっていた。仮に、改善のための管理技術をA社が持ちあわせていなかったとすれば、適切な管理技術を教育、訓練により導入する必要がある。JITは、生産活動における改善・改革ための有効な管理技術である。生産活動に係わる、短納期、ロットサイズなどの問題は、JITの活用が効果的である。

すでに「1.視覚化のメリット」の中で、5Sは生産現場におけるムダや異常を「視覚化」するための道具であることは述べている。又、文書はVSOP(注1)のレベル迄達することで、改善の成果をQMS、EMSに反映しシステムの見直しに役立つ。以上のことを踏まえ、キーポイント2を次に示す。

キーポイント2:QMS、EMSへの5S・JITの活用

 

(3)シナジー効果の評価

企業が儲けるためには、まず利益を出さなければならない。この先、利益を出すためには売上高が増える、コストが下がる、又企業風土が変わるなどの効果が必要になる。更に売上高を増やすためには、売れる製品が開発される、クレームが減少する、短納期対応ができる、小ロット対応ができるなどによる効果が必要になる。

このように期待される効果項目を列挙し(大項目3、小項目15)、5S、JIT、ISO9001及びISO14001が、それぞれの項目に及ぼす影響の大きさを表したものがシナジー効果一覧表である(表4 参照)。

 

それぞれの効果項目毎に、5S、JIT、ISO9001及びISO14001が及ぼす影響の程度、大きな影響を及ぼす(◎)、影響を及ぼす(○)、殆ど影響を及ぼさない(空欄)を示した。この表は、企業が、5S、JIT、ISO9001及びISO14001により、効果的に、儲けるため、次のように用いる。

(1)期待される効果、又は得られた効果の評価

本特集の君塚洋司氏の記事4(1)②には、品質コストの考え方に基づき、費用対効果を算定する事例が挙げられている。これは経営上の判断をする上で有用である。又、項目毎の期待効果又は得られた効果の評価に用いることもできる。

 

(2)効果的な組み合わせの決定

シナジー効果一覧表は、5S、JIT、ISO9001

(QMS)、ISO14001(EMS)がそれぞれの効果軸に与える影響をまとめてある。この表を参考にすれば、期待する効果を上げるために、どこにポイントをおいて活動したらよいか、またその組み合わせを決定することができる。次にキーポイント3を示す。

 

キーポイント3:QMS、EMS及び5S・JITの効果評価

5.おわりに

(1)ISO規格は経営に役に立っているか

財団法人日本適合性認定協会(以下JABと略す)のデータによれば、日本国内におけるISO9001:2000審査登録件数約4万4千件、ISO14001:2004審査登録件数約2万件(2006年12月31日現在)である。なお、このデータはJABが認定した審査登録機関から登録証を付与された組織の数であり、JAB以外の認定機関(英国UKASなど)関連を含めると、その数は更に増える。

ISO規格を経営のツールと考えたとき、今までにこれほどまでポピュラーになった経営のツールは多くはあるまい。では、これら登録をしている組織にとって、ISO規格が果たして経営に役立っているのであろうか。

なお、一般的には経営に役立つとは、次の2つの意味で使われるが、本稿では、②の意味に限定して使用する。

具体的な統計データがないため、筆者の経験(講師活動、マネジメントシステム改善のためのコンサルティング活動など)に基づき判断すると、ISO規格が経営のツールとして十分役立たっている組織の割合は、全体の10%~20%程度と推察される。残りの成果を出し切れずにいる80~90%(推定)の中には、現状を変え利益をだす(儲ける)ための仕組みに変えたいとの思いはあるが、その方策が分からない状況下にある組織が少なくないのではなかろうか。

 

(2)執筆の担当

本特集記事は、このような悩みを抱えている企業のために、5S・JIT及びISO9001、ISO14001に係わる経験並びに実務経験が豊富なそれぞれの分野の専門家が、執筆を担当し、ISOで儲けるための方策、すなわち、成功へのプログラムをコーディネートしたものである。

5S・JITは、書籍の執筆、講習会の講師及び現場における改革・改善の指導など、この分野の専門家である古谷誠が、「本特集号の狙い、5S・JITの基本から、儲けるための具体策」を中心とした解説を担当した。

ISO9001は、大学の講師、審査登録機関の判定委員などを務め、ISOの規格(品質、環境、食品安全など)及びOHSAS18001(労働安全衛生)規格に精通するISOチーフコンサルタント君塚洋司が「管理技術との融合による儲けるための具体策及び経営面からの評価方法など」を中心とした解説を担当し、また、本特集号の企画と全体の運営、取りまとめなどの重要な役割を果たした。

ISO14001は、審査登録機関の環境主任審査員であり、また教育機関の講師を務め、環境分野において16年以上の業務実績を持つISOコンサルタント、木ノ内和夫が「EMSを進める上での2つの重要推進事項、本業の推進と関連した環境目的・目標の設定など」を中心として、解説を担当した。

まとめは、ISO研修機関でISO9001審査員研修の講師、その他ISO規格(食品安全、環境、医療機器など)の講師を務めているISOコンサルタントである筆者山本宏司が担当した。

なお、君塚、木ノ内、山本は、今までにもISOマネジメント誌に企業が儲けるために役立つ記事を執筆しているので、後述の参考書籍の項を参考にされたい。

 

(3)ISOと5S・JITのシナジー効果

本編の(表4)シナジー効果表は、ISO規格に5S・JITをどのように組み込むと効果的に儲けることができるかを、分かりやすくまとめたものである。この特集記事の筆者全員で、利益を出すための手段と経営ツールの効果的な組み合わせを表すことができた。

 

この特集記事を読んで、自社でもできると思ったら、「百聞は、1見にしかず」、更に、「百見は、1験にしかず」(著者の造語:百回見るよりも1回の経験がまさる)、すぐに儲けるための活動を実践してみては如何でしょうか。ISO規格を経営ツールとして効果的に使って儲ける主役は、読者皆さんの会社です。

なお、誌面上の関係で説明が行き届かなかった箇所、またはそれぞれの企業の置かれた状況による個別の質問などありましたら、お便りを頂ければ幸いです。お便りの内容に基づき、専門分野の執筆担当者が対応いたします。

 

参考文献:

5S・JIT関連 「一つずつ造れば安くなる」平野裕之著、日刊工業新聞社

ISO 関連 「ISOマネジメント」日刊工業新聞社

・2006年10月号~2007年11月号(予定)リレー連載『今だからこそ○○○』(連載中)、

・2006年4月号特集記事『中小企業だから実現した儲かるISOのコツ』、

・2006年2月号『内部監査はQMS活動全体の状態が分かるバロメーター』

・2002年10月号~2004年2月号連載『中堅・中小企業がISOを本物のツールにする為の鉄則-「現状=Yesから始めよう」』君塚洋司著

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「5S・JIT及び品質と環境のISOで儲ける」の第6章「ISOと5S・JITのシナジー効果で、さらに儲ける」より


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