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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第165話 ピンチをチャンスに変え、お客さんの心を掴む (その1)

1.はじめに

プロ野球シーズン真っ盛りの季節になりました。セ・パ両リーグのチームは、プレーオフに進むため、まず各リーグで上位3位以内を確保することを目標に、鎬を削っています。  

さて、セ・リーグ中日ドラゴンズには先発の要として山本昌投手がいます。山本昌投手は、今年、42歳を迎え、長年第一線で活躍し、通算200勝まであと僅かに迫っています。昨年は、見事ノーヒットノーランを成し遂げ、最年長での達成記録を更新しました。山本昌投手は、このようなすばらしい実績をもつ選手ですが、プロの投手では140km/h以上の直球は当たり前といわれるなか、彼の最速スピードは137km/h前後であり、「非常に球の遅い一流投手」と呼ばれています。野球観戦で、私でも打ち返すことができそうな山本昌投手の投球に対し、なぜ相手チームの打者が次々と凡退していくのか、常々、私は不思議に思っていました。

このような折、今シーズンを迎える前、山本昌投手がテレビに出演し、一流打者に打たれない極意を語っていました。その内容を要約すると次の3点だったと記憶しています。

 

  • 優れたコントロール
  • 137Km/hの直球を速いと感じさせるため、速度差のあるスローカーブなどの有効活用
  • 投球直前までボールの出所がわからない投球フォーム

 

①については、プロの選手として、どの選手にも共通する必須の要件ではないでしょうか。②については、観客はスピードガンの計測値(絶対値)を見ていますが、打者は1球目と2球目、そしてその次の投球のスピードの違いを感じます。つまり、極めて遅い球を見た後では、普通の球速でも、打者は速い(相対値)と感じてしまうのです。この緩急の違いを上手に使い、山本昌投手は、打者に実際の球速より速く見せかけていたのです。私は、今まで、そのような視点から野球観戦をしていなかったので、打者と投手の駆け引きがとても面白く感じました。更に、感心したことは、③についてです。山本昌投手の投球を、実際に打者の視線からテレビカメラが捉えた映像を見て驚きました。打者からは、彼の腕の振りが全く見えません。図1にある投球フォームでは、手の振りが打者から丸見えなので、1(イチ)、2(ニ)、3(サン)とタイミングをとることができますが(図1 参照)、山本昌投手の投球フォームでは、腕が見えたときには、すでにボールが放たれる寸前なので、打者はうまくタイミングをとることができません。ここに、一流の打者でも彼の球を簡単に打てない理由があったのだと納得しました。

  

品質マネジメントシステム(以下QMSと略す)は、顧客満足の向上を図るための活動で、顧客が望むこと(要求事項)を明確にして、この達成に向け取り組む活動です。QMS活動では、顧客が当社に何を求めているのかを、企業が理解することが最大のポイントといえます。つまり、企業の視点ではなく、顧客の視点を持たなければなりません。

野球では、投手が別の意味で打者のことをお客さんと呼ぶ(自分にとって相性の良い打者)ことはありますが、企業活動におけるお客さんとは異なります。

しかし、打者の視点に基づく山本昌投手の極意は、企業活動において、お客さんの視点で顧客満足を得る極意に通じるものがあるのではないでしょうか。

 

2006年10月号から始まったリレー連載、11回目の8月号は、山本宏司が担当致します。

私は、「今だからこそ、マネジメントシステムで我が社のファンを増やしませんか」をメインテーマとし、これまでに2つのサブテーマについて執筆してきました。今回は、「ピンチをチャンスに変え、お客さんの心を掴む」をサブテーマとし、是正処置の重要性について執筆します。野球でも、ピンチを凌いだ次の攻撃で、チャンスが訪れる場面をよく目にします。企業活動においても、ピンチの際に、しっかりとした対応をすることで、これをチャンスに変えることができるのです。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載したリレー連載「今だからこそマネジメントシステムで我が社のファンを増やしませんか」の「ピンチをチャンスに変え、お客さんの心を掴む」より


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