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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第188話 :環境マネジメントシステムを活用したCO2の削減 -5つの原則と10のポイント-

1.はじめに

改正省エネ法が4月に本格的に施行されました。当初、同法は燃料資源を有効に利用するという目的で制定されましたが、温室効果ガスの9割がエネルギー起源により発生するCO2であるところから、今回の改正は省エネ活動を通じたCO2排出量の削減を主な目的としています。同法で改正前に対象となっていた工場・事業者は約14,000カ所であり、改正によりこれとほぼ同数の企業が、新たに規制の対象となりました。当該の企業は、エネルギー消費を原単位で年平均1%低減しなければなりません。

また同時期に、東京都では「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が始まりました。削減義務として8%(一部は6%)が課せられ、罰則が設けられた排出量取引制度として、地域限定ではありますが日本国内初の試みであることから、他の自治体や多くの企業が、その成り行きを見守っています。

このような制度が本格的に動き始め、企業は社会的責任を果たす上で、CO2排出量削減に向けた取り組みに臨まなければなりません。

本稿は、企業がCO2排出量削減に向け効果的な活動をするために理解しておかなければならない、『CO2を算定するための5つの原則』と、CO2排出量削減に環境マネジメントシステム(以下EMSと略す)を活用するときに参考とする、『EMS活用のための10のポイント』を紹介します。

 

2.CO2を算定するための5つの原則

CO2を算定するための5つの原則は次の通りです。

  1. CO2算定のルールを理解する。
  2. CO2算定の組織境界を特定する。
  3. CO2算定の活動境界を特定する。
  4. CO2排出量をモニタリングする。
  5. CO2排出量の値は正確さが重要である。

【原則1】:CO2は空気中に気体として380ppm(0.038%)含まれていますが、私たちはこれを目で見たり、肌で感じることができないので、その存在すら気に留めません。また、私たちは、企業における生産活動や家庭生活でCO2を排出していますが、その実感はありません。そこで、CO2排出量を数値として捉え、測定するための算定方法が必要になります。CO2算定のためのルールの主な要素には、ⅰ組織境界の特定、ⅱ活動境界の特定、ⅲ算定対象ガス、ⅳ排出源別の算定、ⅴ算定の基準(排出係数など)などが含まれます(表1参照)。このCO2算定のルールは、制度毎に異なりますので、十分にその内容を理解する必要があります。

 

【原則2及び3】:組織境界と活動境界は、【原則1】の要素の一部ですが、CO2算定のルールに従って特定した結果は、当該企業のCO2算定の基礎となる事項であり、重要な項目なので原則としました。組織境界と活動境界の意味は、(表1)の内容を参照してください。

【原則4】:CO2排出量を把握するために必要な情報を計測、収集、分析します。モニタリングの結果により、必要な処置を講じます。モニタリングシステムの信頼性は、【原則5】 CO2排出量を正確に把握するための基礎となります。

【原則5】:CO2排出量の算定結果は第三者により検証され、排出量取引制度では、これが金銭的な取引のためのデータとして使われます。従って、CO2の算定ではデータの漏れ、誤りがなく、正確な計算とそのチェックが重要になります。

 

3. EMS活用のための10のポイント

EMSを活用したCO2排出量を削減するための10のポイントは次の通りです。

① 著しい環境側面として特定。

② 中、長期的な目標の設定。

③ 全社展開するための工夫と委員会の設置。

④ 技術者の育成。

⑤ 全従業員への周知・徹底。

⑥ 設備の改造、運転、使用による対策の検討。

⑦ 保守点検事項を定め、メンテナンスの実施。

⑧ 設備の改修又は更新の検討。

⑨ CO2排出量のモニタリング。

⑩ 活動の成果及び経済効果の評価。

 

『EMS活用のための10のポイント』の内容は、(表2)を参照してください(表2参照)。

次に、10のポイントの中から、①、⑥及び⑩を取り上げ、その詳細について述べます。

① 著しい環境側面として登録

EMSは重点指向に基づき、環境への負荷を低減する活動であり、「著しい環境側面」を中心に活動します。ISO 14001 4.3.1では、「環境に著しい影響を与える可能性のある側面(すなわち著しい環境側面)を決定する」とあります。この要求事項に基づき、組織が特定した著しい環境側面は、4.2環境方針、4.3.3目的・目標及び実施計画、4.4.2 力量、教育訓練及び自覚 などの箇条に展開されます。その関係を(図1)の「著しい環境側面」関連図に示します(図1参照)。

 

ISO 14001箇条の繋がり(図1参照)から分かるように、「著しい環境側面」は、環境を改善するためのPDCAの枠組みで管理されます。そこで、まず「事業活動によりCO2を排出する」ことを「著しい環境側面」として取り上げます。すると、EMSのPDCAによりCO2排出量削減のための活動の枠組みが構築され、これを使った効果的な活動が可能になります。

⑥ 設備の改造、運転、使用による対策の検討

CO2を削減するカギは、省エネ対策にあります。省エネを進めるにあたり、5W1H(Whenいつ、Whereどこで、Who誰が、What何を、Why何の目的で、Howどのように使っているか)により現状把握をして、その結果を考慮して対策を講じなければなりません。

省エネの目の付け所は、「省エネ法における工場・事業場判断基準の6分野」が参考になります。

(省エネ法より)

1. 燃料の燃焼の合理化

  1. 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化

 2-1 加熱設備等

 2-2 空気調和設備、給湯設備等

  1. 廃熱の回収利用
  2. 熱の動力等への変換の合理化

 4-1 発電専用設備

 4-2 コージェネレーション設備

  1. 放射、伝導、抵抗等によるエネルギー損失の防止

 5-1 放射、伝導等による熱の損失の防止

 5-2 抵抗等による電気の損失の防止

  1. 電気の動力、熱等への変換の合理化

 6-1 電動力応用設備、電気加熱設備等

 6-2 照明設備、昇降機、事務用機器、民生機器等

「省エネの必要性は理解していても、具体的な進め方が分からない。」企業の管理職から、このような声を聞くことがあります。省エネ対策は、ムリなく、ムダなく進めるためには、力量のある技術専門家が欠かせません。社内で技術専門家を育成する(ポイント④ 技術者の育成 関連)、外部から専門家の指導を受けるなどの検討が必要です。

⑩ 活動の成果及び経済効果の評価

CO2の削減は、老朽化した設備をエネルギー効率の良い最新の設備に置き換えるハードの側面と、エネルギーの運用、改善及び設備のメンテナンスによるソフトの側面があり、企業は双方を組み合わせて活動します。前者は一般的に多額の費用が必要で、後者は前者と比べるとその負担は軽くて済みます。いずれにしても費用対効果を考慮して活動しなければなりません。CO2排出量削減の成果、経済的な効果などは、トップに報告し、トップの理解を得ます。また、トップから活動に係わる支援と的確な指示を受けます。このような場が、マネジメントレビューといえます。

(紙面の都合で、10のポイントに係わる詳細な説明はここまでといたします。本稿の内容について、不明な点、疑問な点があればメールでご連絡くだされば、折り返し回答いたします。)

 

4.おわりに

昨年の9月に、ニューヨークで開催された国連サミットで、鳩山首相は温室効果ガス削減の中期目標について、『排出量を2020年までに1990年比で25%削減する』と表明しました。その後、12月に開催されたCOP15では、新興国の強い反発により、新たな温室効果ガスの削減目標の採択は見送りになりましたが、CO2を含む温室効果ガスの削減は、人類にとって重大な課題であることには違いありません。

これからの企業活動では、エコロジーとエコノミーを両立させる。これが、企業のあり方と言えます。省エネ法や東京都の条例で規制の対象となっているか否かに拘わらず、CO2排出量削減に積極的に取り組む姿勢、これが企業にとって大切なのではないでしょうか。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特別記事「環境マネジメントシステムを活用したCO2の削減 -5つの原則と10のポイント-」より


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