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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第186話 :第3章 「そっ」と優しく環境に-サービスの特徴をEMSに活かす-(その2)

3.サービス業のEMS活動のポイント

第1章で、サービスマネジメントに係わる重要な4つの要素と、その相互関係を表したものが、サービストライアングルであることを説明しました(第1章 図9参照)。サービストライアングルの要素である、『サービス戦略』、『人』、『サービスシステム』に基づき、これから先、EMS活動をサービス業に活かすためのヒントを、プラス思考の『I』(増やす)により説明します。

サービストライアングルのもう1つの要素である『顧客』については、他の3要素の全てに関連するので、それぞれの要素の中で説明します。

 

4.『サービス戦略』における留意点

『サービス戦略』の中でEMS活動を活用するポイントは、次のとおりです。

 

◇環境に係わるサービスを増やす。

◇環境に関する良質な情報を増やす。

◇自然環境に感謝し、自然に対して、やさしいことを増やす。

 

(1)環境に係わるサービスを増やす

既存のエコビジネスにおけるサービス分野の一例として、大気汚染防止など公害防止に係わる業務や環境に関する研究開発、エンジニアリング、測定・分析、教育・訓練、情報提供などを挙げることができます。

また、新エネルギー産業として、太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、バイオマス発電、バイオ燃料などがあり、今後、これらの産業が、更に新たなサービスを創出することが考えられます(図5参照)。

常に環境ビジネスの動向に注意を払うことで、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

第6章で紹介する(株)ミズノは、廃棄物処理事業が本業ですが、環境セミナー、教育事業を新たに加えた事業展開を図っています(第6章参照)。

 

(2)環境に関する良質な情報を増やす

ISO 14001に基づくEMSでは、環境方針を情報公開しなければならないので、その内容を組織のホームページで見ることができます。筆者の偏見かもしれませんが、ホームページに掲載されているサービス業の環境方針を見ると、それは、どの組織も五十歩百歩で、独自性がないように思われます。

環境方針は、経営者が従業員、顧客など外部の利害関係者に向けて、環境に対する思いを伝えるための大切なメッセージです。従業員は、このメッセージをしっかり心に受けとめ、それぞれの役割を果たすことで、効果的なEMS活動を行います。外部の利害関係者は、このメッセージの内容により、組織を評価しています。利害関係者の一人である学生にとっても、環境方針や環境報告書の内容は、就職先の企業を選ぶ際の大切な要素になるのです(図6参照)。

第6章では、従業員や顧客を魅了する(株)ミズノのCREDOを紹介しています。その内容を参考にしてください(第6章参照)。

 

(3)自然に対してやさしいことを増やす

第7章のモロゾフ(株)のインタビューで川喜多社長は、「自然の恵みから得られたものを使っているので環境に配慮することは当然のこと。」と、自然に対する感謝の気持ちを仰っていました。

自然に対する感謝の気持ちがあるからこそ、自然に対してお返しをするという考え方が生まれてきます。

筆者が出張のとき、定宿としているホテルでは、10年以上も前から、グリーンコイン制度を導入しています。この制度は、備え付けの歯ブラシ、カミソリなどの使い捨てアメニティーグッズを全て使用しなければ、部屋に備え付けのグリーンコインをフロントに渡します。そのコインは枚数に応じて植林活動の支援金となります。つまり、未使用のアメニティーグッズで浮いたコストを植林活動に使うということです。筆者は、グリーンコイン制度に協力するため、少しばかり荷物は増えますが、出張の際にはいつも、歯ブラシ、カミソリなどを持ち歩いています。

第7章のモロゾフ(株)では、自然に対するやさしい心配りとして、地域の周辺清掃に取り組んでいます(第7章参照)。

 

5.『人』における留意点

 サービストライアングルでは、『人』とは、サービスに従事する従業員のことをいいますが、ここでは、顧客、供給者などの外部の人たちを含め、それに関連する事項を述べます。

◇社内で環境にやさしい人を増やす。

◇外部にも環境にやさしい人を増やす。

 

(1)環境にやさしい人を増やす

EMS活動をはじめとする全ての活動において、組織で最も大切なのは人財であり、組織の隆盛は、いかに優れた人財を育てるかにあります。

EMS活動においては、組織の経営理念、環境方針により、従業員は、自らの役割を認識し、手順を考え、これを実行します。また、従業員は、外部の人達に、自組織のEMS活動の説明をし、協力してくれるようお願いをします。

第6章(株)ミズノでは自主学習、第7章モロゾフ(株)では教育訓練制度により、積極的な従業員教育を行っています。

また、モロゾフ(株)の社内論文コンクールは、環境活動に係わるモチベーションを高めるために効果的な方法であるといえます。

(2)外部にも環境にやさしい人を増やす

外部の人とは、顧客、供給者、地域住民、その他の利害関係者をいいます。

サービスの特徴の一つに『顧客との共同作業』があることは、第1章で述べました(第1章参照)。従業員は、顧客に節電、ゴミの分別など、組織の環境活動に対して協力をお願いします。この活動を通じて、顧客の理解が得られれば、その輪は広がり、環境にやさしい人を増やすことができます。

海外旅行など長時間のフライトの後、機内の汚れは半端なものではありません。この問題の解決策は、汚れやゴミの量を減らすという発想ではなく、汚さない人(顧客)を増やすことにあると思うのですが、どうでしょうか。

第6章(株)ミズノでは、地元の小学校で、エコ教室を開くことによって、これから社会を背負っていく子供達の環境教育に一役買っています。

 

6.『サービスシステム』における留意点

 『サービスシステム』は、フロントヤードとバックヤードの仕事とその連携を図るための仕組みをいいます。『サービスシステム』におけるEMS活動のポイントは次の通りです。

◇顧客や外部とのコミュニケーションを増やす。

◇フロントヤードとバックヤードのコミュニケーションを増やす。

◇サービスに関連し、環境に良いモノを増やす。

 

(1)顧客や外部とのコミュニケーションを増やす

顧客、供給者、周辺地域など外部から得る情報は、組織のEMS活動へ気づきを与えてくれます。従って、外部との相互の情報のやりとりをするためのコミュニケーションの場を増やすことは、組織にとってメリットがあるといえます。

第6章(株)ミズノでは、『お役立ち情報』や『FAX通信』により、顧客とのコミュニケーションを図っています。

第7章のモロゾフ(株)では、販売員が顧客とのコミュニケーションから得た情報や販売員の鋭い観察によって得られたノウハウを、『カリスマ販売員に学べ』と題した管理ツールにまとめました。

 

(2)フロントヤードとバックヤードのコミュニケーションを増やす

フロントヤード、バックヤードそれぞれが単独のEMS活動をするより、双方が連携した方が相乗効果が生まれます。製造販売業においては、販売部門がフロントヤードの役割を、設計・開発、製造、管理部門がバックヤードの役割を担っています。

第7章のモロゾフ(株)では、フロントヤードとバックヤードのコミュニケーションを通じ、生菓子ロスの低減などのEMS改善活動を実施しています。

 

 

(3)サービスに関連し、環境に良いモノを増やす

サービスの特徴として『無形性』を挙げることができますが、サービス業が全て形のないものを扱うのかというと、そうではありません。

ホテルを例にとると、ビジネスマン向けのホテルは安らぎの場を提供する、観光客向けのホテルはリッチな気分を提供するなど、そのコンセプトの違いはありますが、顧客に満足してもらうために、部屋にはベッド、テレビ、冷蔵庫、絵画、スタンドランプなどが備え付けられています。また、バックヤードには、厨房機器、エアコンなどの機器があります。

このようなサービスの提供の際に用いる機器、備品などのモノについても、できるだけ環境に良いものを選ぶようにします。

 

7.本章のまとめ

本章では、EMS活動をサービス業に活かすためのヒントについて、事例を挙げて説明してきました。本章以外にも、企業のホームページから様々な活動事例に関する情報を得ることができます。しかし、他社のEMS活動が、そのまま自社にとって有意義であるとは限りません。

ここで大切なことは、他社の事例の真似をするのではなく、自組織に適したオリジナルなEMS活動をすることが重要なのです。

本章のねらいは、紙、ゴミ、電気の削減から一歩踏み出した、自組織のためのEMS活動をするための発想法を提供することにあります。

本章の最後に、キーワードをまとめましたのでご活用ください。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「製造業の営業・販売とサービス業に活かすためのISO  -私たちの会社は顧客の期待を超える- 」より


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