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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第177話 組織を活かす、QMSを活かすための技術・技能の伝承」「わざ」を仕組みで活かす -「気づき」の大切さと「気づき方」を伝える- (その3)

3.「気づき」をQMSに反映する

次に、(図9)に挙げた条項の中から、「気づく」ことに寄与するISO 9001の条項として、「6.2.2 力量、認識及び教育・訓練」、「7.2.3 顧客とのコミュニケーション」及び「8.5.2 是正処置」について説明をします。

(1)「6.2.2 力量、認識及び教育・訓練」

教育・訓練により、「外からの気づき」の機会を得るためには、外部講習会への参加、工場見学、雑誌の購読などの方法があります。但し、これらの方法を適用しただけ、つまり、教育のやりっ放しでは、「気づく」ための効果は得られません。「教育・訓練」を受ける人に動機付けをするために、予め教育・訓練による効果の確認方法を明確にすることが必要です。

その一例を、次に挙げます。

外部講習会に参加したときは、講習会で学んだ内容をレポートまたは、報告会で報告する。

工場見学に参加したときは、異なる業種においての共通な要素である、人(教育・訓練)、設備(管理方法)、原材料(取り扱い)、方法(作業の仕方)などの切り口で、自社との比較(優れている点と劣っている点)をし、報告する。

雑誌の購読では、回覧用紙の名簿欄に加え感想またはキーワードをメモする欄を設け、読み終わった人は、雑誌記事から得た感想や情報を報告する。

いずれの方法も、教育・訓練への参加者に対する動機付けに加え、内部コミュニケーションによる他の人への「気づき」の広がりの効果が期待できます。

 

(2)「7.2.3 顧客とのコミュニケーション」

QMSは、顧客満足の向上を目指し、顧客の期待を超える製品やサービスを提供するための仕組みですから、顧客から得た情報は、「外からの気づき」のきっかけとして代表的なものといえます。そして、それを顧客より直接得た、ただの情報で終わらせることなく、その背景や関連事項を考慮することで、顧客の意思を読みとることができ、それが企業にとって貴重な情報となります。

また、顧客が企業に対して実施する2者監査は、ISO 9001の要求事項や取引に係わる契約書に基づき、活動が行われているか確認するものであり、その結果は、「外からの気づき」に有効な情報となります。

 

(3)「8.5.2 是正処置」

 企業活動において問題が発生した時は、その原因を究明し、再発防止を図ります。この是正処置活動において、原因を究明するステップが、「内からの気づき」を多く得られる機会となります。本来の姿と現状とのギャップを認識することで、それまで、気づかなかった問題が目の前に現れてくるのです。

また、「8.2.2 内部監査」は、企業内での監査により、現状を把握し、不適合に対して是正処置をする活動です。内部監査において監査を受けた側は、その指摘により「内からの気づき」の機会を得ますが、更に、監査をする側にとっても、次のような「内からの気づき」を得る機会となります。

社内の他部署の現場を観察することで、自部署の問題に「気づく」。

監査を受けた部署の是正処置の結果を確認することで、自部署の業務改善へのきっかけを「気づく」。

 

4.QMSを技術・技能の伝承に使う

次に、ISOマネジメントシステムを、会社の利益に繋がる道具として使うことがどういうことなのかを、ISO 9001 QMSで説明します。

ISO 9001の英語の原文には、136のshallを含んでいますが、このshallは、品質マネジメントには欠くことのできない活動、つまり要求事項を表します。企業が要求事項に対する自らの活動に係わる手順を定め、実践し、審査登録機関が企業の活動状態を確認し、全てのshallが適合している状態であることをもって、ISOの認証が、可能となります。

構築したQMSが要求事項に適合さえしていれば、企業が定めた手順が自らの企業の利益に繋がるか、繋がらないかに拘わらず、認証を受けることができるのです。ですから、企業がQMSそのものを役立てる意図がなければ、良い結果がでるはずはありません。

また、多くの場合、品質マニュアルにはISO 9001規格の条項番号の順に従って活動の手順を記述します。しかし、実際に手順を使うときには、使い手がQMSをどのように使いたいのかによって、条項番号の並びではなく、それぞれの繋がりを変えなければなりません。このように、使い手がQMSの中の要素の繋がりを意識することが、QMSを道具として使うコツになるのです。

 

読者の皆様は、大道芸のひとつである南京玉すだれをご存じでしょうか。「あ、さて、あ、さて、さては南京玉すだれ」との唄に合わせ、すだれを手の上で操り、浦島太郎さんの釣り竿にしたり、日本国旗にしたり、しだれ柳に変身させる芸のことです。

 

QMSを南京玉すだれに例えると、QMSを道具として使うことの意味が、分かりやすいのではないでしょうか。まず、すだれといっても、日除けのために軒先に掛けたすだれでは、自由に形を変えることはできません。軒先のすだれは、日除けをする目的で作られているからです。QMSも同様に、要求事項に適合することだけを目的として作れば、QMSを様々な形に変化させることはできません。

玉すだれを操って、釣り竿にしたり、日本国旗にしたり、しだれ柳に変身させたりすることは、QMSを目的に合わせ、形を変えて使うことに相当します。仕組みを使っている皆さんが、QMSを、顧客クレームの減少を図るため、不良の削減を図るため、そして、技術・技能を上手に伝承するためなど、それぞれの目的に合わせて使うのです。

 

次に、「技術・技能の伝承」の目的に合わせたQMSの繋がりの一例を(図11)に示します。

 

「技術・技能」は、ISO 9001の条項において、「7.3 設計・開発」と「7.5.1 製造及びサービス提供の管理」(及び/又は「7.5.2製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」)における活動で扱います。

前項で挙げた「6.2.2 力量、認識及び教育・訓練」、「7.2.3 顧客とのコミュニケーション」、「8.5.2 是正処置」、「8.5.3 予防処置」などからの情報により、「気づく」機会を得て、新しい「技術・技能」が創造され、また既存の「技術・技能」が磨かれます。「技術・技能」は、その内容や目的に応じ、文書化されるものとされないものに分かれ、文書化されるものは「4.2.3 文書管理」で、文書化されないものは「5.5.3 内部コミュニケーション」により伝達され、「6.2.2 力量、認識及び教育・訓練」に基づき定着します。これが、タテ方向(次の世代)とヨコ方向(他の部署)に「技術・技能」を伝承する段階といえます。

更に、日常業務において、「技術・技能」が、活かされているかどうかを確認(「8.2.3 プロセスの監視・測定」:対象となるプロセスは「7.3 設計・開発」と「7.5.1 製造及びサービス提供の管理」)し、その結果、問題を発見したときには「8.5.2 是正処置」、今後問題となりそうな傾向を捉えたら「8.5.3 予防処置」で、「技術・技能」の内容を見直します。

(図11)に示すQMSの形が、確実に技術・技能を伝える枠組み(Plan→Do→Check→Act)、つまり「技術・技能の伝承」のためのPDCAということになります。(図11)に基づき、読者の皆様のQMSが、「技術・技能の伝承」をできる枠組みになっているかどうか確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特集記事「ISOで技術・技能を伝承する」の第1章「組織を活かす、QMSを活かすための技術・技能の伝承」「わざ」を仕組みで活かす -「気づき」の大切さと「気づき方」を伝える-」より


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