このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
3.食品安全チームを監査するときの留意点
内部監査で、食品安全チームが機能しているかどうかを確認するとき、監査員は、
-食品安全チームが力量を備えているか、
-また、その役割は果たされているか
を調査しなければなりません。
このとき、ISO 190011:2011の「4.監査の原則」に基づき、食品安全チームの監査にあたり、留意しなければならない事項を次に挙げます。
(1)専門家としての正当な注意
監査員は、内部監査の専門家として、広範な注意および判断をしなければなりません。特に、次の5点については、重点的に調査をする必要があります。
1)FSMSのPDCAが回っているか。
2)ハザード分析の内容は論理的であるか。
3)ハザード分析の結果に基づき決定した管理手段は効果的か。
4)4M(Man:ヒト、Machine:機械・設備、Material:原材料、Method:方法)の変更、食品安全に係わる異常および問題点などの情報は食品安全チームに伝達されているか。
5)その情報に基づき、ハザード分析の内容は見直されているか。
(2)証拠に基づくアプローチ
信頼性および再現性のある監査結論に到達するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価します。上記(1)で挙げた調査の中で、2)および4)について、証拠に基づく調査内容を具体的に例示します。
2)①現場を確認して、フローダイアグラムと現場の差違を確認する、②原材料に変更がないかどうかを原料特性シートと現物を照合する、③ハザード分析の内容を検証する
4)①予め、現場確認、台帳などの記録の確認、作業者への聞き取り調査により、変更になった事象を把握する。②変更になった事象を食品安全チームが認識しているかどうかを確認する。③その事象が、大きな変化であれば、それがハザード分析の見直しに繋がっているかどうかを確認する。
(3)独立性
監査の公平性および監査結論の客観性を確保するためには、監査員は運営管理者から独立した立場にあることが望ましいと言えます。
1)組織の規模によっては、専門的な知識や経験をもつ要員は限られており、食品安全チームのメンバーが食品安全チームを監査せざるを得ない場合も考えられます。このようなケースでは、監査員は、自らが担当していない活動範囲のみを調査の対象とします。例えば、微生物に詳しい要員は、製造工程のチェックを担当し、装置に詳しい要員は微生物の管理の状況を確認します。なお、これは形だけ行えばよいと言う意味ではなく、監査員は、被監査者の業務に対して本質的な問題を見抜く力量を備えていなければならないことは言うまでもありません。
2)(図3)には、ISO 22000が要求している食品安全チームの役割のみを示しました。実際には、食品安全の知識と経験をもつ食品安全チームは、(図3)に挙げた事項に加えて、その他の業務に携わることが考えられます。例えば、CODEXのHACCPシステムおよびその適用のためのガイドライン(CAC/RCP 1-1969の付属文書)では、HACCPチーム(※1)は、フローダイアグラムを作成するべきとあります。このケースでは、内部監査員は、食品安全チームが、如何にフローダイアグラムを作成し、それをどのように自ら客観的に検証しているかを調査します。内部監査は、日頃気づかない潜在的な問題を顕在化する機会です。そのためには、監査員は運用業務と独立した立場にあり、客観性を維持した調査をしなければなりません。
(※1)HACCPチームを食品安全チームと同義語であるとする。
食品安全チームは、FSMSという扇の要であることは冒頭で述べました。要が壊れたら扇がばらばらになり、使い物になりません。これと同様に、食品安全チームが機能しなければ、FSMSは使い物になりません。内部監査で食品安全チームを調査する目的は、食品安全チームという扇の要に問題はないか、また、機能しているかどうかを確認することにあるのです。
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