このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
今回は、日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」から、第3回 2012年9月号「戦略及び方針を展開する」を3回(第100話~第102話)に分けてご紹介します。今回は、(その1)を掲載いたします。
1.はじめに
7月1日、日本のエネルギー政策に関する2つのトピックスがありました。一つは大飯原子力発電所3号機の再起動、もう一つは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の開始です。前者は、東京電力の福島第一原子力発電所の事故後に、初めての原子力発電所の再起動で話題になりました。後者は、太陽光発電など再生可能エネルギーで作った電気を、電力会社が10年から20年間にわたり固定価格で買い取る制度が始まったというものです(図1参照)。では、これらのトピックスは、日本のエネルギー戦略によるものかと言うと、実はそうではありません。日本のエネルギー戦略は、2012年7月1日現在において白紙だったのです。
ここで、関連するもう一つの話題を取り上げます。7月11日、政府が日本再生戦略の原案を公表しました。日本再生戦略は、震災、原発事故からの復興を柱に、社会の多様な主体が新たな価値を生む「供創の国」を目指すため、2020年までの活動を示したものです。この中には、具体的な取り組みとして11の成長戦略と38の重点施策が盛り込まれています。エネルギー・環境戦略については、これまでの戦略を検証した上で、白紙の状態から、「革新的エネルギー・環境戦略」を、エネルギー・環境会議において8月に決定すると謳っています。2011年3月の東日本大震災及び原発事故が起こる前の日本には、原子力立国を目指すエネルギー戦略が存在していましたが、原発事故を機に先行きが全く不透明になってしまいました。つまり、エネルギー政策の長期的な目標となるビジョンを描けなくなったために、エネルギー戦略を白紙にしなければならなくなったのです。今回は、企業活動における戦略と、これと密接な関係があるビジョン及びミッションを中心に述べます。
ところで、この連載は、ISO 9001に基づく品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)に、ISO 9004の考え方を取り入れることにより、QMSを経営に役立つツールに変えるためのヒントを提供することを目的とします。今回は、ISO 9004 箇条5 「戦略及び方針」に関連する事項について説明します。本稿のポイントは、次の通りです。
◇戦略策定にはミッションとビジョンが重要 ◇SWOT分析で強み、弱みなどを分析する |
2.戦略・ミッション及びビジョン
ISO 9004 箇条5 「戦略及び方針」の構成要素を(表1)に示します。次に、箇条5.1~5.4の要点を述べ、QMS活用のためのヒントについて、解説していきます。
箇条5.1の注記には、「ミッション」及び「ビジョン」の定義が記されており、箇条5.2の注記には、「戦略」の定義が記されています。これらの用語は、本稿を理解する上のキーワードであるので、ISO 9004から引用し、次に示します。
「ミッション」 「ビジョン」 「戦略」 |
「5.1 一般」の要点 ◇持続的成功を達成するために、ミッション、ビジョン及び価値基準を確立し、維持する ◇ミッション、ビジョン及び価値基準は、利害関係者に理解され、受け入れられ、支持されるものである |
ここで、ISO 9004に定義されていない「価値基準」並びに、先に記した「ミッション」及び「ビジョン」の定義について、もう少し詳しい説明を加えていきます。
「ミッション」とは、組織の内部から生まれてくるもので、組織が持つ本質的で深い信念であり、経営理念によって表現される基本的な価値観、精神或いは信念などが、それに当たります。
「ビジョン」とは、「ミッション」を遂行する上で描いた野心的な未来の姿であり、組織が志向する、あるべき姿のことを言います。
「価値基準」とは、「ビジョン」を達成する上で、何を重視しているのかを示したものを言います。
これらは、一言で言うと、「いま当社はどこにいて、これからどこへ向かうべきか」を明確にすることに他なりません。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」 2012年9月号より
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