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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第151話 「第5回 監査結果は、『大いなる財産』」(その2)

2.改訂されたISO 19011のポイント

すでに第1回目の記事で述べた通り、ISO 19011の旧版では、この規格が扱うマネジメントシステムは品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)と環境マネジメントシステム(以下、EMSと略す)の監査に限定されていましたが、新版ではその限定が外されました。これに伴い、監査員の力量もQMSとEMSの監査員に限定された内容から、幅広いマネジメントシステムに対応できる内容に変わりました。

これから監査員の力量について、次の事項により、旧版と新版を比較しながら説明します。

(1)監査員に必要な力量の要素

(2)分野及び業種に固有の監査員の知識及び技能

(3)監査員の力量評価プロセス

 

(1)監査員に必要な力量の要素

 監査員に必要な力量には、①「個人の行動」、②「マネジメントシステム監査員の共通の知識及び技能」、③「分野及び業種に固有のマネジメントシステム監査員の知識及び技能」が、その要素として含まれます(図2参照)。

 

①個人の行動: 旧版には、個人的特質として9項目の要素が挙げられていました。新版では、個人的特質から個人の行動に表題を改め、新たに4項目が追加されました。追加された4項目は次の通りです。

◇不屈の精神をもって行動する

◇改善に対して前向きである

◇文化に対して敏感である

◇協働的である

個人の行動13項目とその内容の要点を(表1)にまとめました。

 

②マネジメントシステム監査員の共通の知識及び技能: マネジメントシステム監査員の共通の知識及び技能は、次の4項目で構成されており、この事項については、旧版からの変更は概ねありません。

◇監査の原則、手順及び方法

◇マネジメントシステム及び基準文書

◇組織の概要

◇適用される法的及び契約上の要求事項、並びに被監査者に適用されるその他の要求事項

③分野及び業種に固有のマネジメントシステム監査員の知識及び技能については、次の項目(2)で、別途、詳しく説明します。

 

(2)分野及び業種に固有の監査員の知識及び技能

監査員の力量について、この事項の内容が最も大きく変わりました。

前述したように、ISO 19011が幅広いマネジメントシステムに対応させる内容に変わったことに伴い、様々な分野のマネジメントシステム監査を実施する監査員にとって必要な知識及び技能について、分野毎に附属書Aで例示されるようになりました(図3参照)。

附属書Aに例示されたマネジメントの分野は、次の通りです。

◇輸送安全マネジメント

◇環境マネジメント

◇品質マネジメント

◇記録マネジメント

◇組織の災害対応力、セキュリティ、緊急事態対応、事業継続

◇情報セキュリティ

◇労働安全衛生

 なお、附属書Aに例示された力量は、個々の監査員にとって必要な要素ということではなく、監査チーム全体として備わっているのが望ましい内容として示されています。

(3)監査員の力量評価プロセス

 監査員の力量は、次のステップにより評価します。

①監査プログラムのニーズを満たす監査要員の力量を決定する

②評価基準を設定する

③適切な評価方法を選定する

④評価を実施する

 この4つのステップの内、③における評価方法の例をISO 19011より引用して(表2)に示します。

 

マネジメントシステムにおける内部監査の役割がいかに重要であるかについては、次項3.で、詳細を述べます。

この項では、内部監査の効果的な実施には、個々の内部監査員及び監査チームに、必要な力量が備わっていること、そして、それを評価する仕組みが不可欠であることがポイントと言えます。

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「経営に活かすために内部監査を変える!」 2012年6月号より

 


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