このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
2.A社の顧客クレーム対応
1.A社の顧客クレーム対応の概要
A社は、従業員100名規模で、麺のつゆを製造している食品会社です。製品のつゆは、顧客の要求に従い、成分の配合を決定し、注文に基づき製造します。顧客のC社は、A社にとって新規顧客で、営業担当者の努力により開拓した外食チェーン店でした。C社からのクレームの第一報は、初品の初回納入時にA社に入りました。C社からの連絡は、試作品でOKと判断した味と、納入された製品の味が違うというものでした。A社における本件のクレーム対応及びその後の結果を次に記します。
(1)クレーム発生日(初日)
① 連絡を受けた営業担当者は、開発・技術担当者(成分の配合業務)を連れ、すぐに顧客を訪問し、現状を確認しました。
② 顧客C社の指摘に対し、製品の味に関する対応は開発・技術担当者が、応急的な納入などの対応については営業担当者が、C社と打ち合わせを行いました。
③ 打ち合わせの結果、A社営業担当者及び開発・技術担当者は、2日後に製品を再納入することを約束し、クレーム対象となった製品を引き取り、A社に戻りました。
(2)2日目
④ A社営業担当者と開発・技術担当者は、再びC社を訪問し、調製した製品のサンプルをC社の検査員に官能検査してもらいました。官能検査は合格と判定され、A社開発・技術担当者は、その結果を早速A社に報告しました。A社の現場では判定結果を受け、作業を製造の最終工程に進めました。
(3)3日目
⑤ A社は、営業担当者が立ち会い、約束通りC社に製品を再納入しました。
(4)10日後
⑥ A社営業担当者は、クレームの発生原因及び再発防止策をC社に報告しました。
(5)1年後
⑦ 1年前のクレーム対応がC社に評価され、C社から受注する製品が増加しました。また、1年前のクレーム以降、A社に係わるトラブルの発生はなく、C社からの信頼が増大しました。
上記のA社対応を図2に示します(図2 参照)。
図2において、上記Aの対応では①~⑤が即時処置に、⑥が再発防止処置に相当します。本件では、適切な即時処置によりA社の「迅速性、技術力、社風」が好印象を与え、また、適切な再発防止処置により「安心感」が得られたことで、顧客C社から良い評価を受けました。更に、その後の実績(トラブルなし)により、C社の信頼を獲得したのです。
2.即時処置と再発防止処置
上記A社の事例においてJIS Q 9001:2000の要求事項では、即時処置は、「8.3不適合製品の管理」、再発防止処置は、「8.5.2是正処置」に基づく活動になります。JIS Q 9000:2006より、「8.3不適合製品の管理」及び「8.5.2是正処置」に関連する用語の定義を抜粋し、次に示します。(用語の番号は、JIS Q 9000:2006に対応する)
「8.3不適合製品の管理」関連
3.6.6修正:検出された不適合を除去するための処置
「8.5.2是正処置」関連
3.6.5是正処置:検出された不適合を又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置
この定義により、修正は、「不適合を適合にする」ことで、不適合が発生した時点で修正することを、即時処置といいます。是正処置は「不適合の原因を除く」ことで、不適合が再発することを防止する意味で、再発防止処置ともいいます(図3 参照)。
先のA社のクレーム対応では、即時処置は現場、現物、現実による3現主義(図4 参照)に基づき、①~⑤により適切に実施することができました。しかし、もし、A社が即時処置だけで良いと判断し、再発防止処置を実施しなかったらどうなっていたでしょうか。即時処置で不適合を適合の状態にできても、その原因は残ったままです。おそらく、別の製品で同様の問題が発生したり、同じ製品でも、例えば発注品番と納入品番が違うなど、事象を変えて問題が発生したのではないでしょうか。「仏の顔も3度」といいますが、顧客は、失敗を2度繰り返せば決して許してくれません。また、同様のクレームが別の顧客で発生したとき、C社の場合と同じ対応ができるかどうか分かりません。再納入の際に、納期調整がつかない、量が確保できない、再納入品の検査が不合格判定になるなど、ストーリーは思い通りに運ぶとは限らないのです。
そこで、即時処置に続き、再発防止処置が重要になってきます。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載したリレー連載「今だからこそマネジメントシステムで我が社のファンを増やしませんか」の「ピンチをチャンスに変え、お客さんの心を掴む」より
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