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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第116話 「パフォーマンスをチェックし、分析する」(その1)

1.はじめに
オペレーションリサーチには、「新聞売り子の問題」という、発注あるいは在庫管理に係わる最適解を求めるための問題があります。街頭に立つ新聞売り子が、少なめに仕入れたことで、より多くの新聞を売って利益を得る機会を損失する、逆に、多く仕入れ過ぎると売れ残ってしまう。それでは、新聞をどれだけ仕入れたら、利益が最大になるのか、オペレーションリサーチでは、この問題の答えを導いてくれます。
この事例と同様の問題で、製品が新聞ではなく洋菓子だったらどうでしょうか。洋菓子の販売店では、曜日、季節、天気、顧客の気分など、様々な因子を考慮して、仕入量を決めるようです。これだけでも大変なのに、製品の種類が多ければ、その解を得ることは至難の業と言うしかありません。それを見事に解決した企業の活動事例を本誌2009年10月号特集記事(参考文献1参照)で紹介しました。
この特集記事では、営業・販売及びサービス業における、マネジメントシステム活用のポイント及び企業の活動事例を取り上げました。この中に、前述した生洋菓子の廃棄ロスを25ポイント削減した事例を掲載しました。M社は、洋菓子を製造し、全国に販売網を展開する会社です。M社では、消費期限切れによる生洋菓子の廃棄ロスを低減するための検討をしていました。日々、各店舗の廃棄ロスのデータを監視していたところ、連続して極めて低い値の実績を出す店舗が現れました。そこで、当該の店舗において、発注数量を決めるための指標、具体的な発注数量の決め方などなどを調査し、このノウハウを全店舗で展開したところ、廃棄ロスを25ポイント削減できたのです。
最も優れたやり方に学び、それを業務改善に活かす、M社の活動は、まさにベンチマーキングにより大きな成果が得られた事例と言えます。

今回は、「8 監視、測定、分析及びレビュー」に関連する内容であるISO 9004「8.3.3 内部監査」、「8.3.4 自己評価」、「8.3.5 ベンチマーキング」並びに、「8.4 分析」及び「8.5 監視、測定及び分析から収集された情報のレビュー」について述べます(表1参照)。この規格で、頻繁に引用されるベンチマーキングについては、特に紙面を割いて説明を加えます。

本稿のポイントは、次の通りです。
◇トップマネジメントの関与により、内部監査が活きる
◇自己評価により、組織の成熟度を評価することで、強みと弱みを明確にする
◇ベンチマーキングで、ベストプラクティスに学び、これを業務改善に活かす

2.内部監査、自己評価及びベンチマーキング
まず、ISO 9004 「8.3.3 内部監査」の要点を、ISO 9001「8.2.2 内部監査」では触れられていない事項に注目して挙げていきます。 
「8.3.3 内部監査」の要点
◇内部監査に、ISO 9001、ISO 14001など二つ以上のマネジメントシステム規格に対する監査及び顧客、製品、プロセス又は特定の課題に関連する固有の要求事項を扱う監査を含むことができる
◇内部監査は、問題、リスク及び不適合を特定する、並びにそれまでの監査で特定された不適合の是正処置の進捗状況を監視するための効果的なツールである
◇とられた処置が効果的であるかどうかの検証は、組織の目標を達成できる実力が備わったことの評価を通して行われる
◇内部監査は、優れた実践事例の特定及び改善の機会に焦点を合わせることができる
◇内部監査のアウトプットは、(図2)に示す事項に役立つ情報源となる
◇監査報告書は、マネジメントレビューへの必要不可欠なインプットである
◇トップマネジメントは、是正又は予防処置の必要性を把握するために、内部監査報告書をレビューするプロセスを確立することが望ましい
 この箇条では、監査に関する手引きとして、ISO 19011(マネジメントシステム監査の指針)を引用しています(参考文献2参照)。ISO 19011では、監査に係わるすべての活動を管理するためのプロセスフローが示されています(図1参照)。(図1)にある監査プログラムとは、「特定の目的に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の監査の取り決め」(ISO 19011 3.13より)のことを意味し、内部監査では、年度毎に策定される年間計画及び内部監査にとって欠くことのできない事項(例えば、監査目的、監査範囲、監査基準、監査方法、監査チームなど)を網羅したものを指します。

ISO 19011では、次の監査プログラムのステップで、トップマネジメントが内部監査に関与することを薦めています。
◇「5.1 監査プログラムの管理 一般」
◇「5.2 監査プログラムの目的の設定」
◇「5.3.1 監査プログラムの管理者の役割及び責任」
◇「5.3.5 監査プログラム手順の確立」
◇「5.4.6 監査プログラムの成果の管理」
◇「5.5 監査プログラムの監視」
◇「5.6 監査プログラムのレビュー及び改善」
トップマネジメントが内部監査に積極的に関与することで、マネジメントシステムの中で、内部監査が意義ある活動になることを示唆しているのです。
 内部監査の結果として得られた監査所見(不適合又は適合)は、不適合については、是正処置に繋げることでマネジメントシステムの改善に役立てますが、ISO 9004では、これに加えて、ベンチマーキング、優れた実践事例の普及、プロセス間の相互作用に関する理解の向上にも言及しています(図2参照)。長年の運用で、マネジメントシステムがマンネリに陥るとの話を耳にすることがありますが、トップの積極的な参画及び監査結果の効果的な活用で、内部監査の形骸化は起こり得ません。
ISO 19011を内部監査に効果的に活用するヒントは、本誌2012年2月号~6月号 連載記事 「経営に活かすために内部監査を変える!」にありますので、参照してください(参考文献3参照)。

 

次に「8.3.4 自己評価」の要点を述べます。
「8.3.4 自己評価」の要点
◇自己評価は、組織の成熟度に関する、組織の活動及びパフォーマンスの包括的及び体系的レビューである
◇自己評価は、組織全体のレベル及び個々のプロセスレベルの両方において、パフォーマンスの強み・弱み及びベストプラクティスを明確にするために利用する
◇自己評価は、改善及び/又は革新の優先順位を付け、これを計画し、実施することの手助けとなり得る
◇自己評価の結果は、(図3)に示す事項を支援する
◇自己評価の結果は、組織及びその今後の方向性についての理解を共有するために利用する
◇自己評価の結果は、マネジメントレビューへのインプットとする
 ISO 9004附属書Aに、自己評価ツールが示されています。ここで使われている言葉「成熟した組織」とは、次に挙げる事項により、持続的成功を達成する組織のことを言います。
◇利害関係者のニーズ及び期待を理解し、これらを満たす
◇組織環境における変化を監視する
◇改善及び革新の可能な領域を特定する
◇戦略及び方針を決定し、展開する
◇組織のプロセス及び資源を運用管理する
◇人々に対する信頼を示し、動機付け、コミットメント及び参画の向上につなげる
◇相互に有益な供給者及びその他のパートナとの関係を確立する
 この評価ツールには、5段階で成熟度のレベルが示され、自らの組織のレベルを評価する際には、そこで示された内容について、レベル1から順に確認していきます。レベル1からレベル5までの要素全てが満たされれば、最上位のレベル(レベル5)と判定されます。自己評価によって得られた結果は、自社にとって、どの要素が強みであり、何が弱みであるのかを、自ら認識することに役立ちます。 ISO 9004附属書Aの自己評価表の中から、「内部監査及び自己評価活動」を評価するための調査事項を(図4)に挙げました。「内部監査及び自己評価」活動に係わる自社のレベルがどの位のものか、試しに評価してみてください。

 ISO 9004には、ベンチマーキングという手法が頻繁にでてきます。
「8.3.5 ベンチマーキング」の要点
◇ベンチマーキングは、パフォーマンスを改善することを目的として、組織内外のベストプラクティスを模索するために利用する測定及び分析の手法である
◇ベンチマーキングは、戦略及び方針、運営、プロセス、製品並びに組織構造に適用され得る
◇ベンチマーキングの種類、ベンチマーキングを成功させるための要素、ベンチマーキングの実施方法に係わる事項を、(図5)に示す
 ベンチマーキングの内容については、改めて4章で説明します。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」 2013年5月号より

 

 


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