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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第105話「戦略及び方針を展開する」(その3)

3.財務資源

「6.2 財務資源」の要点
◇財務上のニーズを明確にして、現在及び将来の事業に必要な財務資源を確保する
◇組織の目標に関係する財務資源の効果的な配分及び効率的な利用を監視し、管理し、報告するためのプロセスを確立し、維持する
◇このプロセスにより、非効果的又非効率的な活動を見極め、適切な改善活動に着手する手段を提供する
◇マネジメントシステムのパフォーマンス及び製品の適合性に関係する財務報告は、マネジメントレビューに利用する
◇マネジメントシステムの有効性及び効率の改善は、例えば次の事項のように、財務状況に好影響を及ぼし得る
-内部的には、プロセス及び製品の不具合を減らすこと並びに材料又は時間の無駄をなくすこと
-外部的には、製品の不具合、補償、製造物責任及びその他の法的リスクによるコスト、並びに市場喪失によるコストを減らす

 箇条6.2では、企業活動で使用する(1)財務資源の運営管理、(2)品質コスト分析による財務状況の改善、及び、(3)QMS活動により便益を得るための活動事例が述べられています。
(1)財務資源の運用管理
 前述の箇条6.1における「資源の明確化」及び「効果的かつ効率的な利用」に続き、箇条6.2では、財務資源の「効果的な配分及び効率的な利用」の監視、管理、報告を論じています。これら2つの箇条の内容を合わせると、財務資源の運用管理のためのPDCAは、P:財務資源を明確にする、D:財務資源を効果的かつ効率的に利用する、C:これらを効果的かつ効率的に利用している状態を監視する、A:必要により財務資源の配分を見直す、という枠組みの確立とその活用について言及していることが分かります。財務資源の運用管理におけるPDCAの結果は、マネジメントレビューへのインプット情報の一つになることは言うまでもありません。

(2)品質コスト分析による財務状況の改善
 「QMS活動において、どのようなケースで金銭上の損失が発生しますか?」
この問いに対して、すぐに思い浮かぶ事象として、不良品又は顧客クレームを挙げられるのではないでしょうか。これらの損失を貨幣価値に換算することで、工程上の問題を発見し、それを改善するための手法が品質コストマネジメントシステムです。箇条6.2には、「QMSの有効性及び効率の改善により、内部的には、プロセス及び不具合を減らすことなど、外部的には、製品の不具合に基づくコストを減らすことなど、財務状況に好影響を及ぼし得る」との記述があります。これは、直接、品質コストマネジメントに言及するものではありませんが、QMS活動を通じて、上記アンダーライン箇所にある効用を得るために、品質コストマネジメントが役立つと考えられるので、ここに紹介します。
品質コストマネジメントは、QMS活動で発生するコストを、予防コスト、評価コスト、内部失敗コスト、外部失敗コストに分類して、集計、分析し、その結果に基づき、コストを適正に配分するための管理技術です。品質コストマネジメントにおけるコストのカテゴリー、内容、例示を(図4)に示しますので、参照して下さい。
 

(図4)の中で留意しなければならないのは、予防コストと評価コストが、内部及び外部失敗コストと同列に挙げられているため、これら全てが企業活動において、流出するコストであると錯覚してしまうことです。損失コストは、企業活動にとって損失であり、ムダなコストに相当します。これに対して、予防コスト及び評価コストは、損失、ムダなどのロスを削減するための費用であり、企業活動における損失ではありません。
予防コストに関連する活動は、教育・訓練プロセス、品質計画のプロセスなどの支援プロセスで行われ、評価コストに関連する活動は、検査プロセス、監査プロセスなどの評価プロセスで実施されます。QMS活動に伴うロスを削減するために、資源運用プロセスを使って見直し、それを再配分した先が、予防コスト及び評価コストなのです(図5参照)。

品質コストマネジメントの一般的な運用方法は次の通りです。
①品質コストテーブルを作成する。品質コストテーブルには、品質コストの区分(例えば、外部失敗コスト、評価コストなど)、項目(例えば、クレーム対処、代品交換など)、費目(例えば、クレーム対応人件費、クレーム出張費など)、算出式(費目毎に定めたコストを算定するための計算式)を含む。
②QMS活動により発生した品質コストのデータを記録する。
③得られたデータを時系列(例えば、月毎、週毎)にまとめ傾向を確認する、失敗コストのパレート図に表し分析を行うなど、どのような状態にあるのかを確認する。
④コストの側面からQMSの問題点を発見し、処置を行う。又、品質コスト削減に向けた処置を実施する。
品質コストマネジメントは、コスト面からQMSの問題点を発見できる、品質に関連するコスト削減ができるなどのメリットがあります。その反面、データの収集と分析には手間が掛かり、それが現場の負荷になる可能性があり、これがデメリットと言えそうです。
そこで、筆者は、あまり工数をかけずに、QMSを貨幣価値で評価する次のような簡易法をここに提案します。
①過去3年(或いは5年)遡って、発生した外部及び内部失敗コスト、評価コスト、予防コストを調査し、時系列における傾向を把握する。
②その中から、何カ所かの測定ポイントにおける外部及び内部損失コスト、評価コスト、予防コストの内容を分析する。
③損失コスト削減に向け、資源運用プロセスにおける資源の配分を見直し、損失コスト削減に向けた評価コスト、予防コストへの再配分を検討する。
品質コストマネジメントは、品質に係わるコストを評価することだけが目的ではありません。貨幣価値に換算した評価結果は、これまでとは違った視点からQMS活動の問題点を気づかせてくれ、これを改善することに意義があるのです。

(3)QMS活動により便益を得るための活動事例
 箇条6.2の注記には、財務的及び経済的な便益を明確にして、それらを得るための活動の枠組みを明示するISO 10014 「品質マネジメント-財務的及び経済的便益を実現するための指針」が引用されています。
 ISO 10014は、品質マネジメントの8原則(※2)に基づいて、個々の原則と適切な品質管理技法を組み合わせて、便益を達成するためのPDCAの枠組みの参考事例を示しています。本稿では、その中から「顧客重視」と品質管理技法の組み合わせにより、便益を得るためのPDCAの枠組みを取り上げ、その活用の仕方を説明します(図6参照)。
(※2)品質マネジメントの8原則(詳細は第2回目の記事を参照):顧客重視、リーダーシップ、人々の参画、プロセスアプローチ、システムアプローチ、継続的改善、事実に基づくアプローチ、供給者との互恵関係

①まず、顧客重視に基づくQMS活動により、目的(収益の改善、競争力の強化など)を明確にすることで、これを達成するためのPDCAの枠組みが必要になります。その枠組みを構築するときに参考になる事項が、②から⑥に挙げられています。
②ISO 9004とは内容は異なりますが、ISO 10014の中にも自己評価をするための質問事項が用意されています。その質問に対する回答結果を踏まえて、目的とする便益を得るためのPDCAを策定します。
③市場を評価するためには、顧客からのフィードバック情報を分析する、顧客リレーションシップマネジメント(CRM)により顧客満足情報を得るなどの手法を活用して現状を把握します。また、顧客要求事項を特定して、それを製品特性に変換する品質機能展開(QFD)の活用、故障モード影響解析(FMEA)により設計段階における問題の発生を未然防止します。
④ISO/TS 16949(品質マネジメントシステム-自動車生産及び関連サービス部品組織のISO 9001:2008適用に関する固有要求事項)のコアツールである先行製品品質計画(APQP)、製品部品承認プロセス(PPAP)、並びに資材所要量計画(MRP)などを活用して、円滑な生産活動を実施します。
⑤バランススコアカード(BSC)、ベンチマーキングにより、活動の計画(PLAN)、実施(DO)における成果を評価し、問題はないかどうかを確認します。
⑥⑤で問題が発見されたとき、それを解決するための改善を検討して実施します。改善の手順は、(図7)に従って行います((図7)の説明は省略)。

4.おわりに
ISO 9001では扱っていませんが、財務資源は、企業活動にとって不可欠であることは言うまでもありません。しかし、バブル成長期の名画買いのような金儲けに走るのではなく、企業は、様々な企業活動を通じて社会に貢献する、そのために必要な利益を得なければなりません。
ISO 9004箇条6.2 「財務資源」では、便益を得るための活動、その活動で得た資源の配分、資源の配分の見直しについて言及しているのです。

次回は、「利害関係者に対する価値創造能力を高める」と題し、ISO 9004 「6.3組織の人々」について述べる予定です。

(参考文献)
ISO 10014 「品質マネジメント-財務的及び経済的便益を実現するための指針」
「品質コストマネジメントシステムの構築と戦略的運用」 (株)日科技連出版社 伊藤嘉博著


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