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ISOアラカルト

このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第119話 「効率的、かつ効果的な改善、革新をする」(その2)

3.革新
 この章では、ISO 9004 「9.3 革新」の要点について述べます。
「9.3.1 一般」の要点
◇組織環境の変化によって、利害関係者のニーズ及び期待を満たすために革新を必要とすることがある
◇革新にあたり、次の事項を行うことが望ましい
-革新の必要性の明確化
-効果的かつ効率的な革新プロセスの確立及び維持
-関連資源の提供

「9.3.2 適用」の要点
◇革新は、(図5)に挙げる適用事項の変化に応じて、すべての階層における課題に適用することができる

「9.3.3 タイミング」の要点
◇革新を行うタイミングは、革新が必要とされる緊急性と、革新のために利用する資源の可能性のバランスに基づく
◇革新は、戦略と整合するプロセスを利用して計画し、実施する優先順位を付ける
◇革新活動は、必要な資源をもって指示されることが望ましい

「9.3.4 プロセス」の要点
◇革新のためのプロセスの確立、維持及び運営管理は、(図6)に挙げる事項によって影響され得る

「9.3.5 リスク」の要点
◇計画された革新活動に関連するリスクアセスメントを実施し、必要な場合は、緊急時対応計画を含めてリスクを軽減するための予防処置を準備しておく
 「革新」とは、冒頭で述べたとおり、新しいこと、物、方法の導入を言います。また、JIS Q 9004:2010巻末の解説では、「革新」の概念を次のように説明しています。
 「組織は、それを取り巻く経営環境の変化に迅速に対応するため、必要に即し組織の既存の枠組みの一部又はすべてを否定し、抜本的に見直し、新しい環境に適した枠組みを生み出す革新によって持続的成功を実現できる。」
 革新は、場当たり的な方策を講じるのではなく、改善のためのプロセス(例えば、PDCAの枠組みで示される)のように、組織において、革新のプロセスを予め策定する必要があります。このとき、革新のためのプロセスの確立、維持及び運用管理は、(図6)に挙げられている事項に影響を受けます。


 

さて、ここで、ピーター・ドラッカーが唱えるイノベーションの機会及び原理について説明します。ピーター・ドラッカーは、「イノベーションと企業家精神」(参考文献3参照)の中で、イノベーションの機会及び原理について述べています。
同氏は、イノベーションとは意識的かつ組織的に変化を探すことであり、この変化を捉える機会は七つあると言います。これら七つの機会を(図7上)に示します。七つの機会は、大きく2つに分けられ、①~④が企業や産業の内部の事象であり、⑤~⑦が企業や産業の外部の事象を表します。これらは、互いに重複する特徴を持っています。また、①~⑦の順番には意味があり、信頼性と確実性が大きい順に①から並べられています。例えば、新しい知識の出現によるイノベーションは、目立ち、重要ではあるが、信頼性は低く成果は予想しがたいと言うのです。
次に、イノベーションの原理を(図7下)に示します。イノベーションに必要な「なすべきこと」が、5項目挙げられています。革新(イノベーション)を理解する上で、参考になると思いますので、「イノベーションと企業家精神」を一読されることをお薦めいたします。

4.学習
 この章では、ISO 9004 「9.4 学習」の要点について述べます。
「9.4 学習」の要点
◇学習を通して、改善及び革新を奨励することが望ましい
◇持続的成功を達成するためには、「組織としての学習」及び「個人の能力を組織の能力へ統合する学習」を取り入れることが必要である
◇「組織としての学習」は、(図8左)に挙げる事項を考慮する
◇「個人の能力を組織の能力に統合する学習」は、人々の知識、思考パターン及び行動パターンと組織の価値基準とを組み合わせることによって達成される
◇これは、(図8右)に挙げる事項を考慮する
◇このような知識への迅速なアクセス及び利用は、持続的成功を運営管理し、維持する組織能力を高める
 ISO 9001に基づく品質マネジメントシステム(QMS)を構築している企業であれば、少なくともQMSの問題に係わるデータは、記録され、分析され、改善に活用されているはずです。
それに加えて、ISO 9004が目指すレベルは、例えば次のようなことを意図しています。
◇情報を共有するための計画的な活動、イベント及びフォーラムが存在する
◇良い提案を評価する仕組みがある
◇戦略及び方針に学習を取り上げる
◇トップマネジメントが学習推進活動を支援し、自ら模範を示す
◇学習が改善及び革新プロセスの基盤となっている
◇誤りから学び、改善の機会により、リスクを取り除き、失敗を許容できる組織文化がある
◇学習のために外部との関係を維持している

5.結び
本稿で取り上げた、「革新」及び「学習」は、ISO 9001には含まれませんが、企業活動においては、有用な要素です。ISO 9001に基づくQMSにおいて、「革新」は、「7.3設計・開発」及び「8.5 改善」に関連づけ、「学習」は、「6.2 人的資源」及び「8.5 改善」に関連づけて、現在のQMSに取り込むことにより、QMSのレベルアップが図れるのではないでしょうか。

さて、これまで10回にわたり、ISO 9004を紹介してきました。この連載が、ISO 9004を学び、その要素をISO 9001に基づくQMSに取り入れることにより、
◇QMS活動のマンネリを打破する
◇QMS活動のレベルアップを図る
◇QMSの新たな活用法を知る
そして、QMSを経営に役立つツールに変える一助になれば、幸いです。

 

(参考文献)
(1)(株)翔泳社 「イノベーションのジレンマ」 クレイトン・クリステンセン著
(2)ISO 10014 「品質マネジメント-財務的及び経済的便益を実現するための指針」
(3)ダイヤモンド社 「イノベーションと企業家精神」 P.F.ドラッカー著

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」 2013年6月号より


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