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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第140話 「第1回 誰がために監査をなす」(その3)

3.「監査」とは何か。その意味と意義を知る。

さて、ここからは、この連載記事の2つ目のテーマである経営に活かす内部監査のポイントの説明に入ります。

今回は、連載第1回目にあたり、まず、「監査」の意味と意義について述べることにします。

ISO 19011による「監査」の定義は、次のとおりです。

「監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス。」(※1)

アンダーラインのある「監査基準」と「監査証拠」は、「監査」を理解する上で重要なキーワードとなります。それぞれISO 19011で定義が付けられていますが、ここではこの2つの用語を筆者の言葉を使い、分かりやすく説明していきます。

(※1)ISO 19011の改訂にあたり、「監査」の定義の変更はありません。

 

(1)監査基準とは

筆者の妻がスーパーで食材を買うとき、卵はA店が安い、一方、ソーセージはA店よりB店の方が安いという情報を広告で確認した上で、それぞれの店に目的の品物を買いに出かけます。また、妻が化粧品を購入するとき、乙化粧品は肌が荒れる、甲化粧品は肌の乗りが良いということで、甲化粧品を選びます。この2つの事例は、評価という同じ行動をしているのですが、前者は、値段という物差しで評価をしているのに対して、後者は、相性という物差しで評価をしています。それぞれ評価する物差しが違います。

監査でも、適合なのか不適合なのかを判定する、また、その状態がシステム、業務及び製品にどの程度の影響を与えているのか見極めるための物差しがなければ評価はできません。その物差しが、「監査基準」なのです。この「監査基準」を何にするのかは、マネジメントシステムを俯瞰(ふかん)する立場にある監査プログラム管理者(監査を統率する人)が監査の目的に従って決めます。例えば、認証審査の前の内部監査であれば、ISO 9001、ISO 14001などのISO規格の要求事項を「監査基準」とするでしょう。また、製造部の業務に問題があり、顧客クレームが多発している状況で行われる臨時監査では、「製造管理規定」を「監査基準」とすることもあると思います。つまり、「監査基準」とは、適合と不適合を分ける、また、その程度を計るための物差しと言えます(図3参照)。良い悪い、高い低い、重い軽い、私たちは、何かを評価するとき、その基準に従って判断しています。監査による評価結果を客観的なものにするために、監査基準を決めるのです。

 

(2)監査証拠とは

仕事上で、あるいはプライベート上で大切な判断をしなければならないとき、一般的に、私たちは人任せにせず、予めチェック項目を決めて、それを自分自身で確認したうえで決断します。例えば、新たな住居を探すとき、筆者は、広告の内容だけで決して判断しません。実際に現地に足を運び、地図を見ながら最寄りの駅からの所要時間を確認する、図面を見ながら間取りを確認するなど、必ず自分自身の目で確認します。

 マネジメントシステム監査でも、これと同様に、現場に足を運び、自分自身の目で確認しなければなりません。マネジメントシステム監査は、会社の仕組みがどのような状態であるのかを判断する大切な場なのです。マネジメントシステムの状態は、「定められたこと」と「現実の姿」との対比により確認します。新たな住居の状態を、図面(定められたこと)を実際に現地で見る(現実の姿)ことで確認をするのと同じです。この「定められたこと」と「現実の姿」が監査証拠であり、「定められたこと」を「計画面の証拠」、「現実の姿」を「運用面の証拠」といいます。

筆者は、監査の実施には、左手に「計画面の証拠」を載せ、右手に「運用面の証拠」を載せて、これらを照合することを、常に意識して行っています(図4参照)。「計画面の証拠」は、文書(マネジメントマニュアル、作業標準書、仕様書、図面、フローチャートなど)、被監査者からの説明内容などであり、「運用面の証拠」は、現場における確認、記録、デモンストレーションなどが、それにあたります。

 

(3)監査とは

ここまで、「監査基準」と「監査証拠」の説明をしてきました。ここでもう一度、ISO 190111による「監査」の定義を示します。

「監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス。」

 

この定義の中の「基準が満たされている程度を判定する」とは、監査は単に適合と不適合を仕分けするのではなく、基準に対してどのレベルにあるかを判定する活動と言えます。

適合の領域にあっては、「①とてもすばらしい状態」、「②普通の状態」、「③適合と不適合の境にあり辛うじて適合にある状態」があり、①を充実点、③を観察事項として、②普通の状態との程度の違いを明らかにします。

一方、不適合の領域にあっては、「④手順から外れているもののシステムや製品への影響が殆どない状態」、「⑤たとえ手順への逸脱が小さくともシステムや製品への影響が大きい状態」があり、④を軽欠点、⑤を重欠点として不適合の程度を評価します(図5参照)。

 

これまで説明してきた、「監査基準」、「監査証拠」、「基準が満たされている程度を判定する」とISO 19011の定義を踏まえて、改めて「監査」とは何かを説明します。

「監査」とは、「監査の目的に基づき適合か不適合かを判定するための物差しを決め、いくつかの「定められたこと」と「現実の姿」を照合して、そこで得た結果を物差しで測り、適合の状態(充実点、普通の状態、観察事項)又は不適合(軽欠点、重欠点)を見極めるための組織的で主観的な考えを排除した評価をするための具体的な手順に則ったプロセス」

なお、内部監査は、マネジメントシステムにおける隠れた問題(潜在的な問題)に気づく(顕在化)機会であり、顕在化した問題に対して再発防止(是正処置)を計ることにより、マネジメントシステムのレベルアップに寄与するとても大切な活動です。

内部監査において、「誰がために監査なす」とは、企業自身をレベルアップに導く活動なのです。

 

次回は、内部監査の準備の重要性を取り上げ、その理由と準備における留意点について述べて参ります。

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「経営に活かすために内部監査を変える!」 2012年2月号より


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