ISO 9004で用いる用語は、ISO 9000で定義されているものが多く、箇条3では、「3.1 持続的成功」と「3.2 組織環境」の２つの用語の定義がされています。 また、各箇条の注記にも、用語の定義が掲載されている箇所があります。（トップマネジメント、組織、ミッション、ビジョン、戦略） 箇条3及び各箇条の注記に掲載されている用語の定義を（表２）に示します。

ISO 9001は、顧客要求事項に基づき、製品及びサービスの品質を確実にするための要求事項であるのに対し、 ISO 9004は、組織全体のパフォーマンスの体系的で継続的な改善及び革新を図るための規格であると言えます。

（１）ISO 9001とISO 9004の箇条の内容

ISO 9001とISO 9004の箇条の内容を（表３）にまとめました。両者の違いを５項目にまとめて、その概要を記します。

① 箇条の１桁、箇条4（マネジメントシステムの基本的な要件）、箇条5（トップマネジメントの役割）、箇条6（資源）、箇条7（プロセスの運営管理）、 箇条8（監視、測定及び分析）の枠組みは同じであるが、その内容は異なる。

② ISO 9004には、箇条9があり、この中に「改善」、「革新」、「学習」が含まれる。

③ ISO 9004箇条5では、戦略がキーワードである。

④ ISO 9004箇条6で取り上げている「資源」は、「財務資源」、「知識、情報及び技術」など多岐にわたっている。

⑤ ISO 9004箇条7では、プロセスを特定せずに一般論を述べている。

（２）ISO 9001とISO 9004のモデルの図

次に、ISO 9004の序文「図１－プロセスを基礎とした品質マネジメントシステムの拡大モデル」を（図６参照）に示します。 この図が、ISO 9001の序文「図１－プロセスを基礎とした品質マネジメントシステムのモデル」（図７参照）と、どこが違うのかを５項目にまとめて、その概要を記します。

① 中心にある２重に描かれた円、内側の円はISO 9001、外側の円はISO 9004の枠組みを表す。

② 円の上の四角枠及び箇条4に「持続的成功」という用語が使われている。これは、どのような環境下でもその事業を存続させられることを意味する。

③　円の下の四角枠には、マネジメントシステムの基盤となる品質マネジメントの原則（ISO 9000）が記されている。

④ 円の左右の四角枠に「組織環境」という用語が使われている。これは、目標の達成、及び利害関係者に対する組織の行動様式に影響を及ぼし得る内的、外的な要因及び条件の組み合わせを意味する。

⑤ 円の左右の四角枠に「利害関係者」という用語が使われている。これは、顧客、オーナ／株主、組織の人々、供給者及びパートナ、社会を意味する。

次回、「持続的な成功に８原則を活用する」では、ISO 9004箇条4及び品質マネジメントの８原則について述べる予定です。