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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第74話 「QMSは顧客満足を向上させるために変える」(その1)

今回は、日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌の2013年8月号に掲載した特別記事「QMSのマンネリを打破する!」(後編)を2回(第74話~第75話)に分けてご紹介します。

 

1.はじめに

「経営判断にひらめきや創造力が重要なのは言うまでもないが、データへの感度が低い経営者は脱落しかねない時代がやってきた」 このように結んだ記事が、日本経済新聞に掲載されていました。(参考文献1参照)
この記事では、膨大なデータの分析により、次に示す企業活動への活用を紹介していました(図1参照)。
◇自動車の加工ラインにおいて、どの工作機械のどの刃物で何秒削ったか等のデータを収集し、これを分析して、最適な製造条件を導き出す
◇回転すし店で、年間10億件に達するすしの販売データを分析し、鮮度管理、需要予測に活用する
 先に記した結言は、加工条件の設定、需要予測に係わる最適解を導く際に、経験と勘だけに頼らず、データを分析することによってこそ、最善の答えが得られることを示唆していたのです。

 本稿は、『QMSのマンネリを打破するための目の付け所』を前編と後編に分け、お伝えしています(図2参照)。今回は、後編として、 冒頭で述べた「8.4 データの分析」の活用、並びに「8.5.1 継続的改善」及び「5.6 マネジメントレビュー」に係わる見直しのポイントを説明します。


図1.工作機械で収集したデータを分析する

図2.QMSマンネリ打破の目の付け所

2.データの分析活動に係わる活動の見直し

冒頭の新聞記事は、企業活動において蓄積された大量のデータから、価値のある情報を引き出し活用する手法(データマイニング)について論じていました。データマイニングは、 IT技術の進歩により、大量のデータ蓄積が可能になったことにより、近年、注目されるようになった技術です。 さて、それではまず始めに、「8.4 データの分析」に関する現在の活動状況について、次の事項を確認して下さい。

  • (1)何をするためか、その目的が明確でないデータを取り続けていませんか。
  • (2)関連するデータ間の関係を調べることをしていますか。

(1)使用目的の分からないデータの扱い

企業活動において、日々、工程管理の結果(温度、圧力、時間など)、製品検査の結果、原材料の在庫情報などのデータが取られています。 その中には、現在、不要であるにも拘わらず、取り続けているデータが含まれていることが少なくありません。 不要になったデータとは、どのようなものか、これから具体的な事例を挙げて説明します。
(事例1)立ち上げ当時、工程が不安定であったため、その改善をするために、収集することにしたデータ
(事例2)顧客クレームにより、新たにチェック項目を設け、その結果を記したデータ
(事例1)は改善目的、(事例2)は検証目的で取り始めたデータです。不要になったデータとは、例えば、(事例1)では工程改善が進み問題が解決した、 (事例2)では方法、設備の変更など根本対策を講じてクレームがなくなったことで、現時点では、使うことがなくなったにも拘わらず、収集しているデータを指します。
データは、それ自体に価値があるのではなく、それを活かしてこそ価値を生み出すのです。 不要になったデータを取り続けていることは、まさに、価値を生まないムダな仕事をしていることに他なりません。 そこで、現在、扱っているデータの必要性について、改めて、見直すことにより、業務のムダが排除できます。 データの必要性の見直しのための2ポイントを次に挙げます。


①データ収集をするための目的を明確にする

データを収集する目的は何か、また、その目的にとって必要なデータに漏れはないかどうかを確認して、企業活動にとって必要なデータと不要なデータを区分します。 なお、データを収集する目的は様々ですが、その一例を(表1)に例示しましたので参照してください。

②品質管理手法を活用してデータを分析する

先に述べたように、データは活かしてこそ価値を生み出します。 そこで、収集したデータは、生データで管理するのではなく、品質管理手法(統計的手法)を使って、データの傾向、状態、関係などを把握します。 ISO 9001の各箇条で用いられる、主な品質管理手法を(表2)に示しましたので参照してください。
なお、①において、不要と判断したデータについては、データ取りを止める前に、次に示す方法により、これまでの実績をまとめてみると良いでしょう。
◇時系列(週、月単位)のデータをまとめる(折れ線グラフで表す、平均及び標準偏差などを算定する)
◇項目毎に層別(母集団を項目毎に分ける)して、データをまとめる
このような処理により、それまで気づかなかった有用な情報を得ることができたり、新たにデータを収集する必要性の検討に結びつくこともあります。


表(1)データを収集する目的

表(2)データ分析のための品質管理手法例


(2)関連するデータ間の調査

ここではまず、(図3)及び(図4)により、事業活動と品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)との関係を考えてみます。 企業は、社会に対し価値を提供し、その報酬として利益を得ます。そこで、企業は、より多くの利益を得るために、売上を増す及び/又は原価を減らそうと考えます。 次に、売上を増やす(目的)ために、販売量を増やす(手段)及び/又は販売価格を上げよう(手段)とします。以下、(図3)に示すような目的と手段の関係が続きます。
 次に、顧客満足の向上を図るための活動として、顧客対応サービスの向上、販売能力の向上などの活動を挙げることができます。
これらの活動は、QMSの「7.2顧客関連プロセス」、「7.3 設計・開発」、「7.4 購買」、「7.5 製造及びサービス提供の管理」に係わるプロセスにおいて実施されます(図4参照)。 また、これらのプロセスに従事する要員は、力量を持って業務を遂行しなければならず、そのために必要な教育・訓練を課されます。
(図3)と(図4)を合わせてみると、事業活動とQMS活動との関係が分かります。事業活動とQMS活動は、繋がっているのです。
 この関係を基に、
◇利益を増やすためにはどの要因を変化させたらよいか
◇その要因を変化させる具体的な手段は何か
等の問いに対して、仮説を立て、その仮説を検証するためのデータの分析により、事業活動にリンクしたQMSが実践できます。


図3.事業活動とQMSの関係(その1)

図4.事業活動とQMSの関係(その2)

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特別記事「QMSのマンネリを打破する!」 2013年8月号より

 


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