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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
第69話 「QMSは永遠に完成しない」(その1)

今回は、日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌の2013年7月号に掲載した特別記事「QMSのマンネリを打破する!」の(前編)「QMSは永遠に完成しない」を2回(第69話~第70話)に分けてご紹介します。


3.CO2の算定

2013年4月15日、東京ディズニーランド(以下、TDLと略す)が、創立30周年を迎えました。TDLと東京ディズニーシー(以下、TDSと略す)の2012年度の来園者数は、2,750万人で過去最高を更新し、本年度は更に、この数字を更新する勢いです(図1参照)。
TDLが30年経っても、未だに顧客に愛され続けているのには、幾つかの要因があると思います。筆者は、その要因について4月19日にテレビ東京のワールドビジネスサテライトで放映された「“夢と魔法の王国”ディズニー 成長続けた30年」を視聴して、次の事項に着目しました(図2参照)。

  • ①スタッフの教育・訓練
  • ②来園者への調査及びスタッフへの調査
  • ③調査結果の分析
  • ④新しい製品の投入
  • ⑤トップの関与
①スタッフの教育・訓練
TDLでは、スタッフ20,000人の9割以上がアルバイトであるにも拘わらず、一人ひとりが、プロとして仕事に誇りとモチベーションをもっています。TDLの教育・訓練は、画一的ではなく、様々な工夫が施され、この点に着目して出版された書籍は少なくありません。
②来園者への調査及びスタッフへの調査
TDLでたった1カ所しか設置されていない入り口では、毎日、来園者に対する聞き取り調査が行なわれています。顧客が、何の目的で来園し、何を求めているのか、この30年間欠かさずに調査しているのです。
また、マネージャーは、園内を巡回してスタッフの対応をチェックしています。スタッフが顧客に対して、すばらしいパフォーマンスを発揮したとき、マネージャーは、スタッフにその場で「ファイブスターカード」を渡します。このカードには、様々な特典(オリジナル記念品と交換できる、定期的に開催されるファイブスターパーティに参加できるなど)があり、スタッフのモチベーションアップに効果を発揮します。
③調査結果の分析
顧客から得たデータは、緻密な分析により、新商品(おみやげ、グッズ、スナック菓子など)の開発に活かされます。
④新しい製品の投入
TDLの来園者は、リピーターがその9割を占めます。そこで、新たな発見をリピーターに提供するため、園内で販売する商品は常に見直しされています。TDLとTDSで扱う商品は、年間3万点で、その内の5,000~6,000点が新商品であり、例えば、定番のポップコーンは、これまでに150種類の商品が開発されたと言います。
また、パレード、アトラクションなど、顧客に提供するサービスもまた、見直しの対象です。例えば、TDLの誕生記念日である4月15日には新パレード「ハピネス・イズ・ヒア」が始まり、「スター・ツアーズ・アドベンチャー・コンティニュー」がリニュアルし、5月7日からグランドオープンしました。
⑤トップの関与
前述した①~④は、トップの支援なくしてその実施はできません。
トップは、経営に係わる決断をするだけではなく、自らおもてなしの第一線に立ちます。年に一度、同園をアルバイトに解放する「サンクスデー」では、社長自らが清掃スタッフとしての役割を担い、他の幹部と共にアルバイトをもてなしていました。
これらの活動の源になっているのは、「ディズニーランドは、永遠に完成することがない」と言ったウォルト・ディズニーの言葉にあるようです。
絶えず、顧客満足に必要な要素を見直し成長するTDLには、マンネリはありません。そして、ウォルト・ディズニーの言葉の中にこそ、企業におけるQMSマンネリ打破に通じるヒントがあると筆者は考えます。
東京ディズニーランドのイメージ TDLが成長し続けてきた要因

2.マンネリ打破に向けた目の付け所

筆者は、品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)を構築した企業から、「QMS活動に慣れてしまいました。何か目新しいことはないでしょうか」との問い合わせを受けることが少なくありません。これらの企業におけるQMSの活動実態や運用年数はそれぞれ異なりますが、聞き取り調査をする中で、筆者は、次のような共通事項に気づきました。

  • ◇QMSで定めた手順の遵守だけに目が向いている
  • ◇QMSの活動は、ISO 9001で要求されている範囲に限定されている
  • ◇QMSの見直し及び改訂が殆どされていない

広辞苑では、マンネリ(マンネリズム)を次のように説明しています。

一定の技法や形式を反復慣用し、固定した型にはまって独創性と新鮮さを失うようになる傾向

 筆者に相談を持ちかける企業は、ISO 9001の要求事項に従って、一定の技法や形式を反復慣用してきたにすぎず、まさにマンネリに陥っていたのです。QMSでは、自らが定めた手順を遵守するのは基本であることは言うまでもありませんが、決してそれだけではありません。
 ISO9001の序文には、「QMSの採用は、組織の戦略上の決定によることが望ましい」とあります。組織の戦略は、組織環境の変化によって変わり、これに基づいて、QMSも変えていかなければなりません。その内容は、ISO 9001の要求事項の範囲に限定する必要もありません。 先のウォルト・ディズニーの言葉を借りれば、「QMSは、永遠に完成することがない」のです。また、(図2)のTDLの成長の秘訣は、企業活動の成長の秘訣にも繋がります。
 そこで、(図2)に挙げた事項に関連するQMSの箇条に焦点を当て、本稿では、その見直しのポイントを述べていきます。(図2)の①から⑤に関連するQMSの箇条を(図3)に示しました。②は、「8.2.3 プロセスの監視及び測定」に相当すると考えられますが、企業には、独自のプロセスが存在することから、これを「8.2.2 内部監査」に置き換えました。
 これより、QMSマンネリ打破の目の付け所を説明していきます。

QMSマンネリ打破の目の付け所

 

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した特別記事「QMSのマンネリを打破する!」 2013年7月号より

 


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