今回は、株式会社鶏卵肉情報センター『月刊HACCP』誌に掲載した連載記事「ISO 22000の内部監査を活かす」より、2012年4月号「すでに準備から、内部監査は始まっている」を3回(第60話~第62話)に分けてご紹介します。今回は、(その3)を掲載いたします。
次に、どれだけの時間をかけて、どのような準備をすれば効果的な内部監査ができるのかについて、量と質に分けて説明します。
①量: 内部監査の準備には、内部監査で費やす程度の時間をかける。
②質: 内部監査の調査は、「変新※後」に注意する。
内部監査の準備には、内部監査で費やす程度の時間をかけます。事前準備では、被監査部署の食品安全マネジメントシステム関連文書の確認、および過去の問題点を把握するのはもちろん、活動記録も入手し、内部監査における質問はどこに重点をおくか、調査をするために必要な監査証拠は何かなどを、これらの資料を基に、予め決めておくのです。
筆者は、ISO研修機関で、食品安全マネジメントシステムと品質マネジメントシステムの審査員研修講師を150回以上務めています。筆者は、自ら審査に臨むとき、最低半日の時間を費やし事前準備をするので、受講生(審査員候補者)の皆さんに、研修の場でで「少なくとも半日、できれば1日を審査の準備に当てなければ組織のマネジメントシステムを客観的に評価できない」と言い続けています。認証審査を行うプロの審査員が、準備に半日を費やすのに対し、年に1度か2度しか監査をする機会のない内部監査員が、準備せずに監査に臨んで、的を射た指摘などできるはずはありません。
筆者の子供の頃のヒーローといえばスーパーマン。普段は気弱で頼りない新聞記者が、大事件が起こるとスーパーマンに変身し、悪者を退治する。これがお決まりのパターンでした。今思えば、スーパーマンは、ウルトラマンや仮面ライダーなど変身もののヒーローの先駆けだったのかもしれません。変身もののヒーローの魅力は何と言っても「変身後」にあります。
内部監査の事前準備でも、目の付け所は「変新※後」にあります。
これらの情報は、内部監査の場で、被監査者から聞き出すことができるにもかかわらず、なぜ、わざわざ事前にそれを調査しなければならないのでしょうか。
その答えは、私たちが被監査者の立場に立つと分かります。内部監査員から質問をされたとき、被監査者の私たちは、自らが認識している範囲のことだけを説明します。私たちは、気づいていないことや都合の悪いことは監査員に説明しません。しかし、実際は、私たちが気づいていないこと、都合の悪いことに問題が隠されているのです。
問題というのは、そこにすでに存在していても、それを問題として認識していないが故に、突然発生したかのように私たちの目の前に現れます。内部監査は、問題そのものが、身近に存在することを気づく場なのです。
内部監査員は、内部監査で何を調べるのか、そのためにどの資料を説明してもらうのか、どの工程を観察するのかを予め決めておきます。
入念な事前準備なくして、企業活動にとって有用な所見は得られません。すでに内部監査は、準備のときから始まっているのです。
次回は、監査証拠の説明とその収集について述べる予定です。
株式会社鶏卵肉情報センター『月刊HACCP』誌に掲載した連載記事「ISO 22000の内部監査を活かす」 2012年4月号より
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