今回は、日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌 2006年11月号 リレー連載「今だからこそ、マネジメントシステムでわが社のファンを増やしませんか」から「システムを統合してお客さんの満足を得る」を8回(第39話~第46話)に分けてご紹介します。今回は、(その5)を掲載いたします。
マネジメントシステムの文書化の手順を、次のステップに基づき説明します。なお、この説明において幹とする規格はISO 9001規格とします。
幹とした規格の要求事項に対し、統合する他のマネジメントシステムの要求事項を対比します。 ここで要求事項とは、規格の中で「~すること」(2008年度版では「~しなければならない」)と記述されている一つの文章を指します。例えばISO 9001 4.1の最初の要求事項は、「組織は,この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、かつ、維持すること」です。このISO 9001の要求事項に対し、ISO 14001では、4.1「組織は、この規格の要求事項に従って、環境マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善し、どのようにしてこれらの要求事項を満たすかを決定すること」が対比する要求事項になります。また、ISO 22000では、4.1「組織は、この規格の要求事項に従って、効果的な食品安全マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、かつ維持すること」が対比する要求事項になります(図7 参照)。
幹とした要求事項と対比した要求事項を、同じ内容として扱って良いか、また、別に区分した方が管理しやすいかを判断基準として、分類します。例えばステップ1で採り上げた要求事項は、対象が食品安全、品質及び環境と違いはありますが、その意図は同じであると考えられるので、同じ項目に分類します。このように分類した結果を一覧表にまとめます(図8 参照)。
マネジメントシステムの文書化及び運営において、取り組みやすいように項目の並び替えをします。例えば、幹となるISO 9001規格ではコミュニケーションが、5.5.3 内部コミュニケーション、7.2.3 顧客とのコミュニケーションというように、別の条項で配置されています。コミュニケーションという要素にまとめた方が解りやすいということであれば、7.2.3 顧客とのコミュニケーションを5.5.3に移し、一部を並び替えます。 ただここで一つ注意しなければならないのは、規格の要求事項を勝手に書き換えないということです。要求事項の意味が解らないから省略してしまう、要求事項が難しいことを言っているから変えてしまうということは、しないようにしてください。
個々の要素の配置ができたら、いよいよ各要素に、実務の内容を当てはめていきます。当然、要求事項に対し、現状の実務内容では該当する活動がない部分が出てくると思います。その時は、現状の実務をベースに少し変えるだけで、対応できそうな方法を工夫してみましょう。
マネジメントマニュアル、規定などに活動内容を文書化します。文書化するにあたり大切なことは、個々の活動に対する5W1H(Who,When,Where,What,Why,How)を明らかにすることです。 以前、私は、5W1Hを明確にしていないマネジメントマニュアルを拝見したことがあります。そのマネジメントマニュアルの作成者に5W1Hを明確にしない理由を尋ねたところ、システムが重くなるという答えが返ってきました。システムが重いというのは、不要な文書や記録を作ることにより、自らを身動きができない状態にしてしまうことを指します。マネジメントマニュアルの中に5W1Hを入れることでシステムが重くなると思うのは誤解であり、それどころか、5W1Hが曖昧な表現では、トラブルや事故の発生に繋がります。 FSMS、QMS及びEMSの全ての要求事項に対して文書化したマネジメントマニュアルの事例を、図9に示します(図9 参照)。ISO 9001、ISO 22000及びISO 14001の要求事項との関連を明示するため、条項番号を左枠に表示しました。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌 2006年11月号 リレー連載「今だからこそ、マネジメントシステムでわが社のファンを増やしませんか」から「システムを統合してお客さんの満足を得る」より
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