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ISOアラカルト(山本宏司からのメッセージ) 過去のISOアラカルト
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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第94話
 「持続的な成功のための準備をする」(その1)

今回は、日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」から、2012年7月号「持続的な成功のための準備をする」を3回(第94話~第96話)に分けてご紹介します。今回は、(その1)を掲載いたします。

 

1.はじめに

筆者は、企業においてISO 9001に基づく品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)構築の支援を始めるとき、「『現状Yes!』で、取り組みましょう」という呼びかけをします。
まずは現状を肯定して、その姿を品質マニュアル、プロセスチャートなどで「見える化」するのです。ISO 9001に取り組むこの機会に、理想的な仕組みを構築したいという企業からの要望を受けることもありますが、 現状の姿を認識せずに、理想型を求めるのは、無謀と言うほかありません。現状の姿が分からなければ、理想型との間のギャップが認識できません。そのギャップが認識できなければ、何をどう変えてよいのかが分からないのです。
構築したQMSで、理想型を目指すもよし、少しずつレベルアップを図るもよし、それを実践する仕組みこそがQMSなのです。ISO 9001に基づくQMS活動は、規格要求事項を満たさなければならないという制約はあるものの、 それぞれの身の丈に合わせた運用ができるので、企業にとって、これほど使いやすい管理ツールはありません。

話は変わりますが、最近、「QMSがマンネリ化した。その打開策はないか」という相談を受ける機会が増えました。
相談されるマンネリ状態の代表例は、次のようなものです。
◇品質目標として設定する目標値が低い(無理なく達成できるレベルに設定している)
◇マネジメントレビューで、トップからの指示がない(マネジメントレビューが単なる報告会議になっている)
◇教育・訓練プログラムが定型化している(新しい教育・訓練プログラムができない)
◇内部監査員は、毎回、同じ質問をする(監査を受ける部門は予め回答を準備している)
◇是正処置の内容がワンパターンである(例えば、教育訓練により、手順を理解させる、重要性を認識させるなど)

個々のマンネリの症状に対する処方箋対症療法はそれぞれ異なりますが、全ての症状に対する根本的な処置として、次の2つが考えられます。一つは、ISO 9001要求事項に対する意識改革であり、もう一つは、改善アプローチと革新アプローチの併用です。

 

(1)ISO 9001要求事項に対する意識改革

ISO 9001の認証維持をするためには、ISO 9001要求事項に適合しなければなりません。 そこで、要求事項を過剰に意識してしまい、これを満たすことだけのためにQMSに取り組んでいる企業が少なくないのではないでしょうか。ISO 9001の要求事項は、決して高いレベルには設定されていません。 顧客に対する活動において、ISO 9001では、顧客の要求事項を満たせば適合であり、このレベルをハードルの高さと例えれば、企業が目指す「顧客の期待を超える」レベルは、棒高跳びのバーの高さとなり、 両者の間には大きな差があるのです(図1参照)。QMSがマンネリの状態であると認識している企業は、ISO 9001要求事項のレベル付近で、マンネリ解消を模索しているが故に、QMSが行き詰まっている可能性が高いのです。 もっと俯瞰的(ふかんてき)な視野に立って、QMSを見直すことが必要です。

ISO9001 要求事項を満たす事と顧客の期待を超えること

 

(2)改善アプローチと革新アプローチの併用

SO 9001 「8.5改善」は、「8.5.1 継続的改善」、「8.5.2 是正処置」、「8.5.3 予防処置」で構成されています。この規格の改善アプローチは、現状の延長線上の問題に対して、解決策を講じる、つまり、 「既存の事実を基に結論を導き出す」帰納法に基づく思考プロセスによるものです(図2参照)。冒頭で紹介した、QMSの構築も、この帰納法に基づく思考プロセスによる活動の1つと言えます(※1)。
ISO 9001要求事項を満たすだけであれば、帰納法に基づく思考プロセスによる改善だけで充分かもしれませんが、実際の企業活動では、変化する顧客ニーズ、社会ニーズに対応するために、抜本的な対策の必要に迫られます。 革新アプローチは、既存の枠組みの一部又は全部を否定して抜本的に見直し、その結果新しい枠組みを創造する、つまり、「あるべき姿にするために結論を導き出す」演繹法に基づく思考プロセスによるものです(※1)。 QMSでの仕組みを変えていくためには、改善アプローチと共に、革新アプローチも必要なのです。

(※1)日本のTQMには、帰納法に基づく思考プロセスの問題解決型QCストーリー、演繹法に基づく思考プロセスの課題達成型QCストーリーがあります。

帰納法に基づく思考

演繹法に基づく思考

 

前述の「(1)ISO 9001の要求事項に対する意識改革」をするためには、ISO 9001から少し距離を置いて、別の品質マネジメントシステムを学ぶことが必要であり、また、 「(2)改善アプローチと革新アプローチの併用」をするためには、革新アプローチを知ることが必要です。そのため、これら双方の目的を果たすために、ISO 9004を紹介することにしました。
今回から始まる連載記事は、ISO 9004規格の解説が目的ではなく、この規格をISO 9001に基づくQMSに取り入れることにより、次に示すニーズに応え、QMSを経営に役立つツールに変えることを目的とします。

  • ◇ QMS活動のマンネリを打破する
  • ◇ QMS活動のレベルアップを図る
  • ◇ QMSの新たな活用法を知る

また、筆者は、本誌2011年2月号の特集記事(参考文献1参照)で、「QMSを上手く使いこなそう -成功事例に学ぶ活用5パターン-」というタイトルを付け、 QMSを効果的に活用するためのポイントを述べました。この中で紹介した5つのパターンは、次の通りです。

  • Ⅰ.特定のQMS要素を徹底活用
  • Ⅱ.他のマネジメントシステム要素の活用
  • Ⅲ.他の管理技術とのシナジー効果による活用
  • Ⅳ.機能別管理でヨコの繋がりを活用
  • Ⅴ.サプライチェーンによる活用

この記事では、要求事項に適合させることだけにとらわれずに、その範囲を広げた考え方が必要であることを述べました(図4参照)。 この記事もまた、この連載の目的と合致する内容ですので、バックナンバーをお持ちの読者は、是非、参考にして下さい。

ISO9001 要求事項にとらわれない

 

(参考文献1)
「ISOマネジメント」日刊工業新聞社 「QMSを上手く使いこなそう -成功事例に学ぶ活用5パターン-」

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「ISO 9004を活用して経営に活かすためのQMSに変える!」 2012年7月号より

 


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