このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。
1.特集記事の総括
この特集記事の目的は、ISO 9001品質マネジメントシステム(以下、QMSと略す)と5Sのシナジー効果を経営に役立たせることにあります。
ここで、第1章から第5章を振り返り、各章で論じてきたことを、5Sの対象となる活動及びQMSの当該箇条、並びに、シナジー効果として挙げる経営上のメリットを(表1)にまとめました。その内容を簡単に説明することで、本特集記事の総括とします(表1参照)。

①企業活動に必要な経営資源として、ヒト(Man)、設備(Machine)、モノ(Material)、作業方法(Method)、カネ(Money)、情報(Information)を挙げ、この5M1Iを効果的に活用するための5Sの進め方を論じました。この内容に関連するQMSの箇条は、「6.1 資源の提供」にあたります。
②経営課題を、5Sにより、現場の課題として「見える化」をする。その目的は生産性の向上にあります。これに関連するQMSの箇条は、「7.1 製品実現の計画」にあたります。
③生産現場には、手待ちのムダ、運搬のムダ、動作のムダなど、様々なムダが潜んでいます。現場の5Sにより、ムダを取り除くことで生産効率の向上を図ります。QMSでは箇条「7.1 製品実現の計画」が、関連します。
④生産で使用する設備・機械が故障すれば、生産計画に支障を及ぼします。設備・機械を対象とする5Sにより、故障の未然防止を図ります。QMSでは、「6.3 インフラストラクチャー」が、設備・機械の維持管理について規定しています。
⑤在庫は、管理費用の発生、製品の陳腐化、品質の劣化など、様々な問題を引き起こします。これら問題の発生を防止するために、原材料、仕掛品、製品などの在庫管理に5Sを活用します。QMSでは、箇条「7.5.5 製品の保存」が関連します。
⑥不良品の発生は、ヒト(Man)、設備(Machine)、モノ(Material)、作業方法(Method)の変動に依るところが少なくありません。不良品の発生を防止するために、4Mに係わる5Sを実践します。QMSでは、「7.5.1 製造の管理」で4Mを管理します。
⑦顧客クレームに対する迅速な処置と再発防止は、顧客からの信用を失墜させないためにも重要です。適切な再発防止には、原因を特定するためのデータ分析が、処置の良否の鍵を握ります。この事例では、データの5Sを取り上げました。QMSでは、是正処置のインプット情報は、「8.4. データの分析」で扱います。
⑧現場と事務作業の5Sにより、業務内容の「見える化」を実践しています。これにより、生産性の向上を目指します。QMSでは「7.5.1 製造の管理」が、関連条項です。
⑨作業室のクリーン度を維持するための5S を実践しています。これにより、製品への異物混入防止を通じて、品質向上を図っています。QMSでは、「6.4 作業環境」が関連条項です。
⑩5S+2S(洗浄、殺菌)により、製品(食品、飲料)の品質保証に取り組んでいます。QMSでは、「6.3 インフラストラクチャー」及び「6.4 作業環境」が関連条項です。
2.おわりに
企業がISO 9001の認証を取得する上で、この規格に含まれる要求事項に、企業の品質関連活動が適合しなければなりません。
ISO 9001に適合させるためには、指定されたものを要求事項に当てはめていくのではなく、要求事項に対する活動内容の決定は、企業に委ねられています。つまり、規格に適合させるのには自由度があるのです。筆者は、自由度をもつ、このQMSに大きな魅力を感じています。既製品とは違うオーダーメイドのスーツのように、まさに、企業の身の丈にあったシステムを作ることができるからです。
QMSに5Sを併せて、企業の目指す方向にあった仕組みを作る。そして、QMSと5Sのシナジー効果により、その仕組みが経営に役立つツールになればと思います(図1参照)。

最後に、この特集記事が、少しでも読者の皆様の、お役に立てば幸いです。この記事について、ご不明な点、ご意見などありましたら、ご連絡下さい。お待ちしております。
日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌の2012年2月号に掲載した特集記事『QMSと5Sのシナジー効果で儲ける Part2』 第6章『むすび』 より
| ISOの研修の内容をご覧になりたい方はこちら | |
| ISOのコンサルタントの内容をご覧になりたい方はこちら | |
| 経営のコンサルタントの内容をご覧になりたい方はこちら |
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年