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このページは、私が執筆した記事や講演会で伝えたメッセージから拾い出し、「ISOを上手に使おう!」と考えていらっしゃる皆様へご紹介するページです。このメッセージは、毎月(月始めに)更新いたします。

第142話 「第2回 監査は、『準備よければ全てよし』」(その2)

2.改訂されたISO 19011のポイント

改訂されたISO 19011の解説、第2回目は、「監査方法」を取り上げます。

これまで、ISO 19011の監査活動に係わる記述には、「文書レビュー」と「現地監査」は、別のステップとして扱われていました(図2参照)。「文書レビュー」は、現地監査に先立ち、監査基準(※1)に対するシステムの適合性を判定するために、文書、記録及び監査報告書の内容が適切であるかどうかを確認することです。一方、「現地監査」は、初回会議の開催、監査証拠の収集及び検証、監査所見及び監査結論の作成、最終会議の開催が主な内容でした。

今回の改訂では、「文書レビュー」が監査活動の一部として取り扱われるようになりました(図2参照)。これに関連して、「現地監査」に対する「リモート監査」という新たな概念が登場しました。

 

「リモート監査」とは、被監査者(監査を受ける部署)が活動している場所以外の場所で行われる監査のことを示し、被監査者が活動している場所で行われる「現地監査」とは異なるものです(表1参照)。

 

また、監査において、監査者と被監査者との係わりの程度による区分も新たに設定されました。被監査者と面談、対話をして行う監査であるか、被監査者と接触をせずに、機器、設備、文書、記録だけを調査する監査であるかで監査方法が異なります。

ISO 19011:2011の附属書Bには、監査を行う場所の違いによる区分(現地監査とリモート監査)と監査側と被監査側との係わりの程度の違いによる区分(面談、対話などにより被監査者と接触するか、しないか)により、4つの象限を設けて、それぞれの象限における監査方法について例示をしています(図3参照)。

  

第Ⅰ象限について

第Ⅰ象限における相互のコミュニケーション手段には、その一例として、インターネットを活用したテレビ会議が考えられます。被監査者が活動している場所に移動せずに監査ができるので、現地監査に比べ、監査者の移動時間が削減できます。一方、監査者による任意の文書、記録などのサンプリングができない、監査における視野が狭く、近くに問題点があっても見逃してしまう、などのデメリットが考えられます。また、被監査者側の都合の良い情報だけが提供され、その結果、監査者が被監査者の活動状況を見誤ってしまう可能性も懸念されます。

第Ⅱ象限について

第Ⅱ象限は、これまで一般的に行われてきた内部監査の活動内容を記したものであり、説明は割愛します。

第Ⅲ象限について

第Ⅲ象限における監査方法のねらいは、被監査者の監査に係わる負荷の軽減にあると考えられます。ISO 19011:2011の序文には、マネジメントシステム監査に対する「リスクの概念」に係わる記述があります。一つは、監査プロセスがその目的を達成しないというリスクで、もう一つは、監査が被監査者の活動及びプロセスを妨げるリスクです。前者のリスクは、第Ⅰ象限のデメリットとして挙げた懸念事項がその一例といえます。後者のリスクの抑制には、被審査者と接触せずに実施する監査(第Ⅲ象限と第Ⅳ象限における監査方法)が有効であると言えます。監査に対する「リスクの概念」については、第4回目の連載記事で詳細を述べる予定です。

監査では、手順とその運用状況を照合して検証します。ただ、企業活動では文書化していない手順は少なくありません。そこで、文書化していない手順については、監査者が被審査者のインタビューにより必要な情報を得ます。しかし、第Ⅲ象限の監査方法では、それができません。また、要員が、マネジメントシステムの方針、目標をどの程度認識しているのか調査するためには、当人に直接インタビューするしか確認の方法がありません。このように、被監査者と接触せずに行う監査では、調査できない事項がある、つまり調査に限界があることがデメリットとして考えられます。

第Ⅳ象限について

第Ⅳ象限において作業を監視するための手段には、現場、事務所に設置されたカメラを通じて調査することが考えられます。監査者にとっては、時間の制約がなく、いつでも必要なときに調査できますが、被監査者にとっては、常に監視されているようで落ち着きません。この点が、今後の改善課題であると思われます。なお、第Ⅳ象限の方法は、第Ⅲ象限の方法より、更に調査できる範囲が狭くなります。

 

第Ⅰ象限から第Ⅳ象限における監査方法のメリットとデメリットについて、筆者の考えを(表2)にまとめました(表2参照)。

内部監査を俯瞰(ふかん)する監査プログラム管理者は、第Ⅰ象限から第Ⅳ象限で表したそれぞれの監査方法のメリットとデメリットを勘案した監査プログラムを策定する必要があります。その一例として、本社の監査チームが地理的に離れた支店を内部監査するときには、第Ⅰ象限と第Ⅱ象限の方法を1年置きに採用すると効果的です。

 (※1)監査基準の説明は、前回(第1回目)の記事を参照

 

日刊工業新聞社『ISOマネジメント』誌に掲載した連載記事「経営に活かすために内部監査を変える!」 2012年3月号より


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